2007年から約12年間、アエラでコラムを連載していたぐっちーさんが亡くなって約5カ月。トランプ大統領誕生から、亡くなる直前に書かれた絶筆までの177本を完全収録した遺作、『ぐっちーさんが遺した日本経済への最終提言177』が2月21日に発売された。そんな177本から、編集者が真っ先に読んでほしいと思った「名作」トップ10を厳選。その中から9位「教育国債を発行して人材教育を」を紹介する。

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 ようやく教育無償化の話が出始めています。国の将来にかかわる投資なのだから、とっくにやっておくべきことだったと思っていますが、また財源がないとか妙な声が(財務省寄りの)経済学者から聞こえてきます。

 私は教育こそ国が投資すべきだと考えており、他のどの公共投資よりも全国民の利益になることがあらゆるデータから証明できます。アメリカなどでは大規模な統計がありますが、高学歴の人間の比率の高い都市のほうが明らかに所得、税収などが多いのです。

 従って財源は国債で賄えばいいという話になるわけですが、この話をすると途端に反論が出てくる。しかし、道路や橋のインフラは国の経済の将来を支える資産なので、建設国債を発行して造る。教育は人的資本として、まさに国の将来を支えるわけですから、同様に教育国債を発行すればいい。橋や道路はよくて人的資本への投資はだめだというのなら頭がおかしいとしか思えません。橋や道路の資産の経済効果は実は不明なこともありますが、教育は100%効果が証明されています。

 日本は財政破綻寸前なのだからそんな余裕はない、という声もよく聞かれますが、これについてはこれまでの著作で破綻になんか直面していないことを散々証明していますので、ぜひご一読を!

 簡単に言えば、日本の借金は1千兆円を超え、約500兆円のGDPの200%もあるので180%程度のギリシャよりひどいという指摘がまかり通るわけですが、なぜか借金だけを見て資産を勘定に入れていない。どこの企業のバランスシートも借金だけを見るなんてことはしないのに、なぜか国だけは片方だけを見るという不可解さなのです。

 
 そもそも経営者のみなさまは将来の収益を勘案し、借金をして投資をして利益を上げるわけであって、それをしないで賃金カットばかりしていては企業の将来が危ぶまれるのと同じこと。国が借金を何に投資するかを考えずに、借金を減らすことばかり考えていてはどうにもなりません。そして人的資本は作れば作っただけ生産性が向上します。無駄な公共施設のようにその後の維持管理費に莫大な費用が掛かることもないわけです。

 イノベーションを支えるべき人材を教育することこそ、日本の将来に重要な影響を及ぼすはずですが……。

※AERA 2017年5月29日号

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ぐっちー

ぐっちー

ぐっちーさん/1960年東京生まれ。モルガン・スタンレーなどを経て、投資会社でM&Aなどを手がける。本連載を加筆・再構成した『ぐっちーさんの政府も日銀も知らない経済復活の条件』が発売中

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