「ゴルフ倶楽部の日本人会員はほぼ欧米留学を経験して、早くから国際感覚を身につけていたし、ぎりぎり最後まで日米開戦に至らないような方策もやっていた。鉄馬の親は早く亡くなったので足かせもなく自由な立場で、そんな意味でもとてもリベラルに生きてきた人ですよ」

 あらためて表紙の写真。穏やかな表情からポリシーが見て取れる。そんな人物の実像を求めて与那原さんは6年もの歳月をかけて追い続けた。

「ノンフィクションの質って、何十年経っても読み物として読まれるかどうか。そして足で探さないと分からないものがまだ山ほどあるのです」

 次回作では、米軍統治下27年の沖縄を意外な切り口で書くとのこと。乞うご期待。(ライター・田沢竜次)

■東京堂書店の竹田学さんのオススメの一冊

 目取真俊さんによる『ヤンバルの深き森と海より』は、沖縄をめぐる怒りと闘いの時評集だ。東京堂書店の竹田学さんは、同著の魅力を次のように寄せる。

*  *  *

 著者は沖縄の記憶を核とした豊饒(ほうじょう)な文学作品を世に問う一方、米軍基地反対運動に関わり、基地を沖縄に押しつけ「捨て石」とする日本政府や本土の日本人を鋭く批判する論考を書き継いできた。本書は、絶望に抗して綴られた14年にわたる沖縄をめぐる怒りと闘いの時評集である。

 本書には戦中の日本軍による住民虐殺・集団自決強制などを否定する歴史修正主義や文化人・政治家の沖縄差別に対する根底的な批判論考、カヌーによる海上抗議活動に対する米海兵隊の不当な長時間拘束や機動隊員の「土人」発言と暴力行為など著者が身を投じる過酷な反基地闘争の記録が収められている。

 安易な消費も称揚も拒絶する著者の言葉は、現政権、そして日本社会の欺瞞(ぎまん)と暴力性を白日の下に晒(さら)す。「あなたはどうするのか」と日本人一人一人が問われている。

AERA 2020年2月24日号