仮に今回、封じ込めに成功したとして、もう心配はいらないのか。動物から人間へとウイルスが伝わる場は、武漢だけとは限らない。これからも同じようなウイルスが発生することはあり得る。

「どの動物からどのようにして人にうつっているのか、その経路を突きとめて遮断しなければ、次の事態を防げない。現地での地道な調査になるはずだが、ぜひ必要だ」

 インフルエンザウイルスが動物から人に感染する経路を解明してきた北海道大人獣共通感染症リサーチセンターの喜田宏・特別招聘(しょうへい)教授は指摘している。

 国立感染症研究所は31日、新型肺炎の原因となるコロナウイルスの分離に成功した、と発表した。国内外の研究機関に提供し、治療薬やワクチンの開発を進めるという。

 今、できることは何か。

 現在は品薄になっているが、通常、ドラッグストアなどで販売されているマスクは「サージカルマスク」といい、ウイルスの吸入を防ぐことを目的に作られてはいない。だが、自分の口から唾液(だえき)や飛沫(ひまつ)を飛ばさないようにすることや、他人のくしゃみやせきで、直接細菌を浴びるのを防ぐことができる。

 鼻と口の周りに隙間を作らず、汚れたら取り換えることが肝心だ。ポケットに入れたり、あごの下につけたりするのも汚れる要因になる。見た目は汚れていなくても、使用中のマスクにはウイルスや菌が付着している可能性がある。触らず、使い捨てマスクの再利用もしない。

 渡航医学専門で、東京医科大の濱田篤郎教授は「すべての人たちが過剰に不安に感じる必要はない」と呼びかける。

 その上で、「まずやってほしいのは日頃から手洗いを徹底すること。アルコール消毒が一番有効です。次に、机など身の回りも消毒しておくこと。この二つが最も効果があります」。

(朝日新聞編集委員・田村建二、 編集部・小田健司)

AERA 2020年2月10日号より抜粋