障害のある当事者や家族、健常児の保護者らが集まってみんなが楽しめる空間について話し合った(撮影/編集部・深澤友紀)
障害のある当事者や家族、健常児の保護者らが集まってみんなが楽しめる空間について話し合った(撮影/編集部・深澤友紀)

 日本の公園は健常児向けであることが一般的で、障害児が遊ぶことは難しい。誰も排除しない、誰もが楽しめる「インクルーシブ」な公園が必要だ。AERA 2020年1月27日号で掲載された記事を紹介する。

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 子どもたちの無邪気な声が響き渡るのは、公園の日常風景だ。だがそんな光景に入れず眺めるだけの子どももいる。

 日本のほとんどの公園は、いわゆる健常児向けに設計されている。ダウン症や脳性麻痺などの障害で体幹が弱い子どもは、ブランコは保護者が抱きかかえなければ乗ることもできない。滑り台は階段が急で幅も狭いため、保護者が子どもを抱きかかえて上ることは難しく、遊ぶことすらできない。車いすに乗る小学生の子どもを持つ母親は、こう話す。

「その場にいるだけで『NO』と言われている気がしてしまう」

 自分たちは受け入れられていないと感じ、公園へ行くのをあきらめてしまう子どもや家族は少なくない。だが今、誰もが楽しめる、誰も排除しない「インクルーシブ」な公園をつくろうという動きが出始めている。

 昨年12月の下旬。東京都小平市でワークショップが開かれた。大手タイヤメーカーのブリヂストンが建設を計画する、スポーツや遊びを通じて多様な人が交流する共生型のスポーツ施設に、どんな遊び場がほしいかを話し合うもので、障害のある当事者や保護者、健常児の保護者、学生や専門家など約40人が集まった。ブリヂストンと共にワークショップを主催したDALA代表でパラアイスホッケーの銀メダリスト、上原大祐さん(38)はこう話す。

「デザインの段階からさまざまな当事者の視点を取り入れることは日本ではほとんどできていない。今日のような動きがもっと広がっていってほしい」

 最初は障害のある子どもや親、健常者に分かれ、「外遊びで困った経験」について話し合った。障害児の親たちの班では「障害のある子ときょうだいが同じ場所で遊べないので、どっちかに我慢をさせてしまう」「遊具で遊ぶには介助が必要だが大人は子どもの輪の中に入りづらい」「東屋で休もうと思ってもイスが固定されていて車いすで利用できない」といった「あるある話」に花が咲く。

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