平成元年に「誕生」した獣神サンダー・ライガー。その闘いは平成という時代を体現してきた(写真:gettyimages)
平成元年に「誕生」した獣神サンダー・ライガー。その闘いは平成という時代を体現してきた(写真:gettyimages)
vs.鈴木みのる (2019年10月14日)/掌底とエルボー、互いの意地のぶつかり合い。鈴木がライガーに引導を渡し、座礼で敬意を示す姿に会場は涙(写真:gettyimages)
vs.鈴木みのる (2019年10月14日)/掌底とエルボー、互いの意地のぶつかり合い。鈴木がライガーに引導を渡し、座礼で敬意を示す姿に会場は涙(写真:gettyimages)

 そのインパクトのあるビジュアルや華麗な技の数々で、多くの人を魅了してきたプロレスラー、獣神サンダー・ライガー。平成と共に生まれ、平成を駆け抜けた彼が、来年1月に引退試合を迎える。AERA 2019年12月30日-2020年1月6日合併号では、彼の集大成となる一戦を見届けるためのポイントを紹介した。

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「プロレスは見たことがない」

 そんな人でも、獣神サンダー・ライガーはご存じだろう。マスクと衣装で全身を覆い、バラエティー番組で軽妙なトークを披露する異形の存在。その小柄さも相まって、一般の人々は「本当にプロレスラーなの? 特撮ヒーローのコスプレではないの?」という疑問さえ感じていたかもしれない。

 肉厚で屈強なヘビー級のプロレスラーに比べジュニアヘビー級(100キロ未満)のライガーの身体は一回りも二回りも小さい。すぐに壊されてしまうのではという不安さえ感じる。

 ただ、プロレスは「デカイやつが強い」のではない。「上手くてヤバイやつが強い」のだ。

 170センチと小柄ながら、無類の練習熱心さと努力で強靱なフィジカルを作り上げた。デカイ男たちにもパワー負けしない空中技、投げ技、関節技の数々で死闘をくぐり抜け、プロレス界のレジェンド「世界の獣神」として名を馳せることになった。

 そのライガーが2020年1月5日、東京ドームでレスラー人生の幕を下ろす。平成と同じ31年間、闘い続けたライガーと、バブルが崩壊した後のどこか閉塞感が漂う時代を、もがき、走り続けて令和を迎えた私たち。

 平成を共に生きた全ての人々へ。平成という時代をプロレスで体現してくれたライガーの集大成となる一戦を見届けるために欠かせないポイントを挙げておきたい。

 まず一つ目は、「小が大を食う痛快さ」だ。

 1980年代のプロレス界では、体格に恵まれない選手の活躍はあり得ないというのが常識だった。ライガーはそこに風穴をブチ開けた。

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