引退の獣神サンダー・ライガー 「小が大を食う」で人々に見せた希望 (2/3) 〈AERA〉|AERA dot. (アエラドット)

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引退の獣神サンダー・ライガー 「小が大を食う」で人々に見せた希望

伊藤彩子AERA
平成元年に「誕生」した獣神サンダー・ライガー。その闘いは平成という時代を体現してきた(写真:gettyimages)

平成元年に「誕生」した獣神サンダー・ライガー。その闘いは平成という時代を体現してきた(写真:gettyimages)

vs.鈴木みのる (2019年10月14日)/掌底とエルボー、互いの意地のぶつかり合い。鈴木がライガーに引導を渡し、座礼で敬意を示す姿に会場は涙(写真:gettyimages)

vs.鈴木みのる (2019年10月14日)/掌底とエルボー、互いの意地のぶつかり合い。鈴木がライガーに引導を渡し、座礼で敬意を示す姿に会場は涙(写真:gettyimages)

 身長的なハンデがあったライガーは、高校卒業後すぐに身長制限のないメキシコに渡り、修業に励んでいた。修業中に今は亡き山本小鉄氏に目をかけられ、新日本プロレスへの入団を果たした。

 練習量は団体でトップクラス。若手時代は雑務に始まり、アントニオ猪木のスパーリングパートナー、先輩のセコンドも務めた上で、わずかな空き時間を見つけてはトレーニングに励み体を大きくした。並外れた努力で花形プロレスラーとしての階段を一歩一歩上っていった。

 華麗で狡猾な技の全てを駆使し、小さな体でヘビー級の巨体を持つ選手とも互角以上に渡り合い、一泡吹かせる。その雄姿に、ファンたちは「してやったり」と留飲を下げた。

 現在40代以上の世代には、学生時代、技の全てから漂うライガーの「本物感」と「ヤバさ」に憧れた人も多いはず。キレキレのライガーになり切り、休み時間の定番「プロレスごっこ」を闘い抜いたのではないだろうか。やがて社会人として巣立ったとき、ちっぽけな自分が会社や世間、社会の理不尽さといった大きな壁に挑む姿をライガーの闘いに重ね合わせ、自らを奮い立たせてきた人も少なくないはずだ。

 平成は、ビジネスの世界でも「小が大を食う」痛快さが数多く見られた時代だった。海外ではガレージの片隅からスタートしたマイクロソフトやアップルが、フォードやGEといった重厚長大企業に代わり、主役に躍り出た。日本でも、大企業や既得権益に挑んだライブドアやソフトバンクに喝采が送られた。

 ライガーが見せてくれた「小が大を食う」という痛快な構図は、平成が終わった今でも、自分たちもいつかこんなことができるのではないか、努力を続けていればいつか……と私たちに希望を与えてくれている。

 二つ目は、「世界が認めた華麗な技」だ。

 殴ることができないプロレスにおいて、格闘技の骨法を取り入れた打撃技「掌底打ち」。メキシコ仕込みの華麗な空中技「スターダストプレス」。瞬く間に相手を天高くつるし上げる、ライガーの代名詞とも言える関節技「ロメロスペシャル」。


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