この日、伊藤さんの母親(57)も初めて裁判を傍聴した。判決の後、娘についてこう話した。

「娘の勇気を誇らしく思っています。心配もありましたけど、よく頑張ったとほめてあげたいと思います」

 伊藤さんがここまで頑張れた理由について、母は静かに語った。

「被害がなかったことにしたくなかった、昔から正義感の強い子どもだったのでそれを隠して生きていくことが彼女にはできなかったのだと思います」

 山口氏についてはこう感情をぶつけた。

「あなたにもし娘がいたらと、想像してほしい。わが子に性被害が降りかかったら、親なら胸が張り裂ける思いです」

 同日午後、山口氏は判決をうけて会見を開き、控訴するとした。

「私は法に触れる行いは一切していません」

 そう語り、「裁判では客観的証拠が検証されることなく事実認定されたことが不服だ」と主張した。

(文/編集部・野村昌二)

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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