稲垣えみ子(いながき・えみこ)/1965年生まれ。元朝日新聞記者。超節電生活。近著2冊『アフロえみ子の四季の食卓』(マガジンハウス)、『人生はどこでもドア リヨンの14日間』(東洋経済新報社)を刊行
稲垣えみ子(いながき・えみこ)/1965年生まれ。元朝日新聞記者。超節電生活。近著2冊『アフロえみ子の四季の食卓』(マガジンハウス)、『人生はどこでもドア リヨンの14日間』(東洋経済新報社)を刊行
ハラマキを編むつもりがムクムク野望が頭をもたげ、ハラマキ兼用のニットキャミソールに挑戦中!(写真:本人提供)
ハラマキを編むつもりがムクムク野望が頭をもたげ、ハラマキ兼用のニットキャミソールに挑戦中!(写真:本人提供)

 元朝日新聞記者でアフロヘア-がトレードマークの稲垣えみ子さんが「AERA」で連載する「アフロ画報」をお届けします。50歳を過ぎ、思い切って早期退職。新たな生活へと飛び出した日々に起こる出来事から、人とのふれあい、思い出などをつづります。

【写真】稲垣さんが編んでいるハラマキ兼用のニットキャミソール

*  *  *

 先週に引き続き、もしもの時の備えについて。

 糸の切れたタコ状態で暮らしていると備えも何も不要と気づいたことは先週ご報告した通りだが、特集の中で一つ気になったことが。

 それは、突然倒れて入院となった時、身の回りのものを誰に持ってきてもらうのかという問題提起。なるほど確かにそうだ。替えのパンツとか歯ブラシとか印鑑とかね。看護師さんに頼めば何とかしてくれるんじゃないかとテキトーなことを考えていたが、んなわけないよね。

 記事によれば1時間6千円ほど払えば請け負ってくれる会社もあるそうで、いざとなればおすがりしようと思いつつ、金で解決ってのもどうもつまらんナとも思う。お金は平等で便利だけどなんかこう、結果が確実すぎてクリエイティブじゃないんだよね。いやいやそんなピンチの時にクリエイティブとかいらんやろって話だが、独身者の老後などどう考えてもピンチの連続なわけで、ピンチを楽しく解決というのは案外大事なことだと思う。

 で、考えてみた。急に入院した時、家族以外で「悪いけどすぐパンツ買ってきて~」と言える人、いるかしら?

……いやいやいましたよ!

 以前、このコラムでもご紹介したが、私、友人に編み物を教えて頂いたことがきっかけで、女3人で毎週「編み物部」の会合を開いているのだ。要するにカフェで数時間、下手な編み物をしながらぺちゃくちゃおしゃべりするというだけなんだが、この編み物効果が侮れない。作業が単調なせいか、ひたすら手元を見ているせいか、なぜだか知り合って間もないのに非常にプライベートな深い悩みなど聞かれもせんのに告白してしまうのである。結果、妙に「深い仲」になっている感じなのである。

 そうだよ彼女たちならきっと、なんだかんだ言って飛んできてくれるんじゃないだろうか?

 と、部活中に打診したところ、やはり「行く行く!」と。皆様、編み物です。6千円払わなくても大丈夫です。

AERA 2019年12月9日号

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稲垣えみ子

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稲垣えみ子(いながき・えみこ)/1965年生まれ。元朝日新聞記者。超節電生活。近著2冊『アフロえみ子の四季の食卓』(マガジンハウス)、『人生はどこでもドア リヨンの14日間』(東洋経済新報社)を刊行

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