ネゼ=セガン氏指揮の「トゥーランドット」は東劇では11月28日まで上映。料金は一般3700円、学生2500円 (c)Marty Sohl/Metropolitan Opera
ネゼ=セガン氏指揮の「トゥーランドット」は東劇では11月28日まで上映。料金は一般3700円、学生2500円 (c)Marty Sohl/Metropolitan Opera
Yannick Nezet-Seguin/1975年、カナダ生まれ。10歳で指揮者を志す。2012年から米国フィラデルフィア管弦楽団の音楽監督。昨年METの音楽監督にも就任(撮影/品田裕美)
Yannick Nezet-Seguin/1975年、カナダ生まれ。10歳で指揮者を志す。2012年から米国フィラデルフィア管弦楽団の音楽監督。昨年METの音楽監督にも就任(撮影/品田裕美)

「トゥーランドット」「蝶々夫人」……。オペラの名演目をひっさげ、今年もメトロポリタン・オペラのライブビューイングがやってきた。METの音楽監督に昨年就任したヤニック・ネゼ=セガン氏がその魅力を語った。AERA 2019年12月2日号から。

【写真】METの音楽監督に昨年就任したヤニック・ネゼ=セガン氏

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 オペラといえば、価格が高い、敷居が高い、“本場”で見たくても遠すぎる……。そんな三つの高いハードルをクリアしたのが、「METライブビューイング」だ。世界最高峰のオペラとして名高い米国ニューヨークのメトロポリタン・オペラ(略称MET=メト)を全国の映画館で気軽に楽しむことができる。

 最近ではラグビーW杯のライブビューイングが記憶に新しいが、METのライブビューイングのスタートは2006年。昨シーズンは世界70カ国以上で上映された。日本では、ニューヨークの上演作品が数週間後に日本語字幕付きで上映される。遠い座席からはよくわからない歌手の表情も、多彩なカメラワークでバッチリ鑑賞できる。幕あいに収められるのはたった今歌っていた歌手や、これから舞台袖でタクトを振る指揮者のインタビュー。「ライブビューイング」ならではの楽しみだ。

「METライブビューイング2019−20」のスタートに際し、第1作となる「トゥーランドット」を指揮したヤニック・ネゼ=セガン氏が来日した。彼が初めて客演指揮者としてMETデビューを果たしたのは09年。

「当時はまだライブビューイングは“普通”のことではありませんでした」(ネゼ=セガン氏)

 記憶に残っているのは、「カルメン」のリハーサル中に歌手のロベルト・アラーニャが、演出家のリチャード・エアに向かってカメラ映りがよくなる方法を提案して却下されたこと、出演者たちがカメラを意識して緊張していたことだ。

「以来、毎年指揮してきましたが、今ではライブビューイングが当たり前になりました。(そのシーズンに)何回か行われる公演の中で、ライブビューイング(で配信される日の公演)が一番いい演奏です。みんなベストを出そうと集中しています」

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