背番号21の池透暢が、7番のエース・池崎大輔にパスを出す。ファンの間では「池池コンビ」と呼ばれる二人だ(撮影/写真部・松永卓也)
背番号21の池透暢が、7番のエース・池崎大輔にパスを出す。ファンの間では「池池コンビ」と呼ばれる二人だ(撮影/写真部・松永卓也)

 日本の快進撃に盛り上がったラグビーW杯だが、実はもう一つのラグビーW杯「車いすラグビーワールドチャレンジ2019」も開催された。3万5千人が熱狂し大歓声で選手たちを鼓舞した。AERA 2019年11月4日号に掲載された記事を紹介する。

【選手の理想かなえる「整備の神様」】

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 選手の多くが口にしたのが、「応援の力」だ。

 今大会は、日本にとって初めてのホームで行う国際大会だった。主催する日本車いすラグビー連盟と日本障がい者スポーツ協会は約90の公立校、約1万4千人の東京都内の小、中、高校生を無料招待した。週末には約1700席の有料化にも踏み切ったが、日本戦は連日大入り、5日間で計3万5千人以上が観戦に訪れたという。初の試みとなる会場DJも好評だった。日本車いすラグビー連盟広報の佐藤裕さんがこう明かす。

「来年のパラリンピックに向けて、応援を増やしたい。それが選手の力になりますから。それも真面目に静かに見るのではなく盛り上がって楽しんでほしい」

初めて体験する大歓声に、選手たちは驚きを隠せなかった。何度も「ダイスケコール」を受けたエースの池崎大輔(41)は試合後、感慨深げにこう語った。

「名前を覚えて、呼んでもらえるのはうれしい。もう、ウルウルしながら走っていました。障害を持つ人があきらめずにスポーツをやっている姿を子どもたちに見せることができた。そういう意味で、すごくいい大会でしたね」

一方で、島川慎一(44)は今後の課題についても語った。

「大歓声はうれしかった! でも、ベンチからの声や選手同士の声が聞こえないことがわかり、来年のパラリンピックに向けて、どう準備すればいいのか参考になった」

 国内でここまでの歓声を受けたことがなかった日本チームにとって、うれしい誤算だったようだ。選手は試合中、ジェスチャーやアイコンタクトを使ったり、ベンチではボードを使って指示を出すなど工夫をしていた。

 優勝したアメリカを筆頭に、オーストラリア、日本、イギリスの4カ国は力が拮抗しており、どこが勝ってもおかしくない。今後について池はこう語った。

「こんなにもコートの中と会場の一体感が自分たちに力をくれるのだと、こんなにも支えられているのだと、初めて知りました。この応援があるからこそ、2020に向けて最高の努力をして、金メダルという結果でみなさんを泣かせたいと思います」
(文中一部敬称略)(ライター・川村章子)

AERA 2019年11月4日号より抜粋