「教員に閑散期はありません。月ごとの勤務時間のデータを集めると、研修や部活の大会、行事の準備などに忙しく、夏休みも残業しています」(内田准教授)

 教員だった夫を過労死で亡くした工藤さんは次のように語る。

「夫が亡くなったのは6月でした。教員の過労死は5月から7月に多く、夏休みにまとめて休めるといっても、そこまで持ちません」

 グラフにあるように変形労働時間制によって「見かけの残業時間」は減るが、働く時間そのものは変わらない。「抜本的解決につながらない」と日本教育学会会長の広田照幸・日本大学教授は指摘する。

 教員の給料は40年以上前に制定された「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」(給特法)によって、月給の4%にあたる調整金がつく代わりに残業代が支払われない。このことによるコスト意識の欠如が、長時間労働を招いている。しかし残業代を支払うとなると、年間で約9千億円が必要と試算されている。

「教員の働き方を改善するには、給特法を改正し残業代をきちんと支払う。それができないのであれば教員の大幅増員か、業務の大幅削減をすべき」(広田教授)

 変形労働時間制が教員の仕事をさらに長時間化させる懸念もある。前出の西村さんは言う。

「学校にいる時間が長くなれば、そこに新たに会議や部活を入れられ、肝心の授業準備は後回しになってさらに長時間化するリスクがある」

 2020年度から学習指導要領が変わる。小学校では英語やプログラミング教育の本格導入に向け、新たな準備も必要だ。子どもたちが「質の高い学び」を得るために必要な働き方改革は何か。数字合わせではない、実効的な施策が求められる。

文/編集部 石田かおる