また、株価の大幅な下落や関電の損害が明らかになった時点で、株主代表訴訟も予想される。経営陣は、多額の賠償責任を負う可能性がある。内部管理体制の構築や情報開示で明確な法令違反が見つかれば、東京証券取引所が関電を、上場廃止の前段階とも言える「特設注意市場銘柄」に指定することも考えられる。

 最も深刻なのは、国内外の投資家に対して、日本のコーポレート・ガバナンス全体への信頼が失われたことだ。

 06年には労働者の保護を盛り込んだ公益通報者保護法が施行され、08年には内部統制報告制度がスタートした。15年には金融庁のコーポレートガバナンス・コードの適用も始まり、この十数年間で、上場企業の内部統制やリスク管理体制、情報開示の水準は格段に上がった。関西電力もCSR行動憲章を策定し、コンプライアンスの徹底を打ち出している。

 関西電力は社外取締役に元三菱UFJフィナンシャル・グループ会長ら4人、社外監査役にも元大阪高検検事長ら4人と日本のエスタブリッシュメントをそろえる「優等生」のはずだった。その関電で起きた「ガバナンス崩壊」で、日本のコーポレート・ガバナンスやコンプライアンスは地に落ちたと言っていい。

(朝日新聞経済部・加藤裕則)

AERA 2019年10月21日号より抜粋

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