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●無職のAさん(50代男性)

 和理非のデモはすべて参加した。車で援助物資を運んだこともある。雨傘運動の失敗から、平和的な抗議では何も変えられないことを学習した。だから勇武派が登場した。自己を犠牲にして戦う彼らの覚悟には心底敬服する。破壊行為? まったく許容範囲。警察のほうがよほど暴力的。警察が過剰反応するから、彼らは破壊に走るんだ。

 街から中国人の姿が消えて、せいせいしている。中国人がいなかった頃の香港に戻りたい。経済の衰退? 香港の命運がかかっている時に、飯の心配をするのは自分勝手。経済が悪くなっても仕方ない。多少の代償は必要だ。

 藍色(親政府側)の人たちは中国に洗脳されている。まだ目が覚めないのか? これまで香港は、他人には無関心、誰も助けてくれない冷たい社会だった。でも一連の抗議が始まって、連帯、自発的行動、助けあい、自己犠牲など美しい場面をたくさん見た。彼らが香港の将来を担うと思うと頼もしい。本当に革命を起こせそうな気がする。自分が求めるのはまさに<光復香港 時代革命>(香港を取り戻せ 革命を起こそう)。どこかに移民することは考え始めている。

●大学非常勤講師のSさん(50代女性)

 教師とソーシャルワーカーによる小規模デモに一度だけ行った。夫は藍色(親政府側)、カナダ帰りの娘は黄色(抗議者側)、私は中間。娘は時々デモに行っている。自分で責任を取るならと黙認しているけど、空港封鎖に参加して捕まりかけ、怖い思いをしたらしい。社会が極端に二分化して、家族や友人関係が分断されたのは深刻な問題。

 この3カ月間、心に大きなしこりがある。7月21日の元朗襲撃が大きな転換点だった。中国の息がかかった有力者の一声で、地元の黒社会が出動した。あれが暴力の応酬の始まり。香港は暴力が支配する街になってしまった。

 香港は大陸から1日150人の移民を受け入れている。行政長官は「香港が嫌なら出て行け。1人去れば3人やって来る」と言う。元々ここに住む私たちがなぜ出て行かなければならないの? 香港市民に背を向ける行政長官に対して、納税者ははっきりNoと言わなければならない。でも政府は、白色テロで事態を収拾しようとしている。

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