重要なことが次々と移り変わる中、指導者なき運動をどう収束させるかは至難の業。私が望むのは、警察の暴力を明らかにすること。そのあたりで矛を収めるしかない。移民はしたいけど、できないからここにいる。

●飲食店勤務のBさん(40代男性)

 デモに行ったことはない。抗議者たちは200万人がデモに出たと言うが、出なかった500万人のことを考えていない。声を上げない大多数の存在はメディアも報道しない。

 逃亡犯条例改正案には反対。この危険な法案を通せると軽く考えた行政長官は本当に愚か。最悪中の最悪。しかも結論を引き延ばし過ぎたことで社会を二分した。しかし撤回は表明したのだから、ここで収めるべき。彼らの五つの要求をすべて呑む政府など、世界のどこにも存在しない。放火や破壊など、法を犯したら罰を受ける責任がある。彼らは人が死ぬことを想像していない。このままだと誰かが死ぬ。現実世界はゲームじゃないんだ。

 香港は植民地だった特殊な場所。西洋を上に見て中国を見下す人が多い。そうしないと自己を保てないから。弟の妻は上海の人だし、自分も大陸に住んだことがあるからわかるけど、大陸にもいい人と悪い人がいる、それだけのこと。香港と同じ。香港人は口を開けば中国に弾圧されていると言い、中国から受けた多大な恩恵は忘れている。

 いま香港で起きているのはメディア戦争。黄色(抗議者側)と藍色(親政府側)が正反対の情報を流してフェイクニュースが氾濫する中、何を信じるか、各自の力量が問われている。黄色は宣伝が得意で、藍色は正直言ってセンスが悪い。抗議者たちのカッコよさに、人は容易に惑わされてしまう。

 破壊行為がエスカレートし、市民生活に深刻な影響が出ている。そろそろ終わらせないと、<得了自由 失了香港>(自由は得たが香港を失った)になる。そうなりそうな予感がしている。

●添乗員のRさん(50代男性)

 7月1日の立法会突入をテレビで見ていた。そして「僕たちは負け続けてきた。この戦いだけは絶対に負けるわけにいかない」という演説を聞き、心が震えた。あれから自分は変わった。

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