「しこりができても、『おできかもしれない』『そのうちなくなるかも』と様子を見る飼い主さんの気持ちはわかります。けれども、しこりを見つけたら様子見をせず、迷わずかかりつけの獣医師に相談してほしい」(同)

 乳がんの予防策は、2回目の発情を迎えるまで(1歳前後)に避妊手術をすることだという。ほかに飼い主にできることは?

「愛の腹部をマッサージするように触って、定期的にチェックしてあげてください」

 キャットリボン運動のテーマはふたつある。ひとつは、猫の飼い主に乳がんについて知ってもらうこと。もうひとつは、獣医師に対する啓発だ。人間のがんでは「標準治療」が確立されている。小林獣医師らは猫の乳がんに関しても「標準治療を確立したい」と考えている。

 猫の早期乳がんは、切除手術が治療の基本だ。猫の乳腺は体に4対8個ある=上イラスト。

「猫の乳腺のリンパ管はつながっているため、できものを摘出しただけでは腫瘍を完全に取り切れず、再発のリスクが上がってしまう。たとえ腫瘍が小さくても、片側あるいは両側全切除が基本です。大きな部位を切り取るので、かわいそうに思うかもしれませんが、不完全な切除で再発して命を落とす方がよほどかわいそうです」

 10月は人間の乳がんを啓発する、ピンクリボン月間にあたる。これにちなみ、JVCOGは10月22日をキャットリボンの日に定めた。連動イベントも企画中だという。

 動物のがんも早期発見、早期治療の時代へ。その一歩を確実に踏み出した。(編集部・澤志保)

AERA 2019年10月7日号