ポジションは大きく分けると、前に位置する8人のフォワードと後方7人のバックスの二つだ。スクラムを組むフォワードは体が大きい選手が多く、身体的な強さを武器に主に守備を担う。一方、バックスは、足の速い選手が多く、攻撃に絡むことが多い。さらに細かいポジションごとに役割がある。例えば、スクラムハーフはパスの起点となり、そのパスをもらうスタンドオフは攻撃方法を決める司令塔になる。フッカーはスクラムの最前列の中央に位置し、ボールをかきだす。今回の日本代表にも身長2メートル近い選手がいれば170センチない選手もいる。体重も70キロから120キロまで選手によって大きく差がある。廣瀬さんは言う。

「スポーツによっては、背が高い人が有利だったりしますが、ラグビーはどんな体形の人にも自分の役割があり、活躍の場がある。だからプレーしながら自己肯定感が高まる気がするんですよね。思慮深い人も必要だし、考えずにぶつかっていく勇気ある人も必要。多様なメンバーだから勝てるというのは、僕は社会の縮図みたいだと思っています。今回は海外出身が15人と歴代最多。これもラグビーが大事にしている多様性の一つです」

 実際に観戦となると、ラグビーはルールが独特で難しいと思われがち。だが、廣瀬さんは「知っておかなきゃいけないルールは二つだけ」と言い切る。

 一つは「ボールを持っている選手が先頭」ということ。そう考えると、ボールを前に投げる「スローフォワード」、ボールより前でプレーする「オフサイド」や、ボールを前に落としてしまう「ノックオン」が反則なのも納得できる。

 もう一つは「立ってプレーする」こと。タックルを受けて倒された場合は立ち上がるまでプレーに参加することができない。倒されたままボールを放さないと「ノットリリースザボール」、倒れたまま相手のプレーを邪魔すると「ノットロールアウェイ」の反則になる。

 多くの種類の反則があってプレーが萎縮してしまいそうだが、「ラグビーは意外に自由度が高いんです。ボールを持ったら走ってもいいし、パスしてもいいし、蹴ってもいいんです」

 と廣瀬さん。例えば、7月にあった日本対フィジー戦では、ウィングで出場した松島幸太朗(サントリー)がサッカーのドリブルのようにボールを運んで、トライした。前に放るのはダメだが、キックはOK。楕円球なのでキックでコントロールしながら進めるのは容易ではないが、攻撃の幅は広がる。(編集部・深澤友紀)

AERA 2019年9月23日号より抜粋