田中愛治総長(67)/東京都生まれ。オハイオ州立大学で政治学博士号。2018年から現職(撮影/山本倫子)
田中愛治総長(67)/東京都生まれ。オハイオ州立大学で政治学博士号。2018年から現職(撮影/山本倫子)

 早稲田大学はグローバル化を推し進め「世界で輝くWASEDA」を目指す。その根底にあるのは多様性を重んじる文化だ。田中愛治総長がこれからの早稲田を語る。AERA 2019年9月16日号に掲載された記事を紹介する。

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 東京大学の講義がまだ英語で行われていた時代、早稲田大学は他に先駆けて日本語による高等教育を行っていました。早稲田大学の教員は1886年に発刊した「早稲田大学講義録」を持って全国津々浦々で「巡回講話」という講義をし、大学に通えない全国の若者に学びの機会を提供しました。その中には田中角栄元首相のような人もいました。そして志ある若者が全国から早稲田に集い、それが本学の多様性のひとつの源泉となりました。

 早稲田の杜には世界各地から人々がやってきます。外国人学生数(通年)は7942人。アジア太平洋研究科、国際教養学部、政治経済学部など7学部14研究科で英語学位プログラムがあります。国際化とは単に英語で学位を取ることではありません。人類社会が答えのない問題にぶつかっている時に自分なりのソリューションを出せる「たくましい知性」と「しなやかな感性」を養うためには、国籍、言語、宗教、民族などが違う人の考え方に触れることが重要です。

 早稲田はグローバル化を進め、産学連携で企業からの委託研究などにも積極的に取り組み、競争的研究資金も数多く獲得し、優れた研究大学としての体制を整えています。同時に、経済的理由で学生が学びを断念しないですむよう我々も必死で努力しています。入試前予約採用給付奨学金「めざせ!都の西北奨学金」や、児童養護施設等入所者、養育里親家庭で育った里子対象の入試前予約採用給付奨学金「紺碧の空奨学金」など約150種類の学内奨学金を用意しています。すべて給付制で年間36億円の資金をあてており、国内の大学ではトップクラスです。経済的な理由で留学を諦めなくてもよいように、海外の篤志家から寄付を募ることも検討しています。

 早稲田にはどんな学生にも居場所がある。学問に取り組む者、スポーツや演劇に打ちこむ者、貧富の差も関係ない。多様な学生がいることこそ早稲田の文化です。総長として、教職員や学生との対話を大事にし、対話集会も開いています。今後も学生や教職員と対話を続けて、共に「世界で輝くWASEDA」を目指せればと思っています。

(聞き手・編集部/小柳暁子)

AERA 2019年9月16日号