「4部屋を申し込んで3部屋当てた」と言う冒頭の不動産投資家の男性も、その一人だ。都内に計15部屋のマンションを持っているという。

「一番欲しかった1億3千万円の部屋は競争率21倍で、抽選に外れてしまった。当たった部屋は1億円以上の角部屋ばかり。倍率は8倍と9倍。富裕層の方が住むわけだから、角部屋でレインボーブリッジが見れる部屋になると、それなりの付加価値はつく」

 穏やかな口調で、こう続けた。

「どうせ住むなら、ちょっと無理してでも買えばいい。払えなくなったら貸せばいいんです。東京に限って言えば、賃貸はバブルがはじけてもそんなに落ちていない。銀座も近い。羽田空港もそんなに遠くない。投資として見たとき、家賃収入を得るならここがいい。これから街ができ、言われているような地下鉄ができれば(晴海フラッグは)『住みたい街ナンバー1』になると思う」

 男性が言った「地下鉄」とは、一部の大手新聞が報じた銀座地区と臨海部を結ぶ新しい地下鉄路線開発構想を受けてのこと。羽田空港までの直結とも報じられており、晴海だけでなく豊洲市場や台場の活性化が期待される。同じく臨海部の新たな交通網となる「バス高速輸送システム(BRT)」が22年度以降の運行を目指し、整備が進められている。

 最上階の8千万円近い部屋を当てたという60代の女性も、不動産投資家だった。東京都港区を中心に数部屋の不動産を所有している。選手村マンションは五輪閉幕後、都と五輪組織委員会の負担でリフォームされ、前述したように23年3月から住むことができる。そうなれば、いま住んでいるマンションは貸し出して賃料を取る予定だ。

「いまも不動産ビジネスで、夫婦合わせて2千万円以上の収入がある。今まで投資は港区ばかりだったけど、これからは中央区。夫は公務員で、私は商社勤めだったけど、貯金2千万円なんてなくてもやっていけるわ」

(ノンフィクション作家・清武英利、ライター・小野悠史、編集部・福井しほ)

AERA 2019年8月26日号より抜粋

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福井しほ

福井しほ

大阪生まれ、大阪育ち。

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