死去直前、50度の厨房で撮影 ドイツ人映画監督が、樹木希林に感じた俳優魂 (1/2) 〈AERA〉|AERA dot. (アエラドット)

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死去直前、50度の厨房で撮影 ドイツ人映画監督が、樹木希林に感じた俳優魂

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古谷ゆう子AERA
「命みじかし、恋せよ乙女」は8月16日から全国順次公開予定。舞台はドイツと日本。樹木さんは、仕事も家族も失った主人公が日本を訪れ出会う旅館の女将を演じた (c)2019 OLGA FILM GMBH, ROLIZE GMBH & CO. KG

「命みじかし、恋せよ乙女」は8月16日から全国順次公開予定。舞台はドイツと日本。樹木さんは、仕事も家族も失った主人公が日本を訪れ出会う旅館の女将を演じた (c)2019 OLGA FILM GMBH, ROLIZE GMBH & CO. KG

ドーリス・デリエ監督は1955年生まれ。桃井かおり主演の「フクシマ・モナムール」、「HANAMI」などで知られる(撮影/倉田貴志)

ドーリス・デリエ監督は1955年生まれ。桃井かおり主演の「フクシマ・モナムール」、「HANAMI」などで知られる(撮影/倉田貴志)

「命みじかし、恋せよ乙女」は8月16日から全国順次公開予定。舞台はドイツと日本。樹木さんは、仕事も家族も失った主人公が日本を訪れ出会う旅館の女将を演じた。

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「なんて温かい人なのだろう」

 ドイツ人映画監督のドーリス・デリエさん(64)は、是枝裕和監督の作品を通して初めて樹木希林さんの存在を知ったとき、そう感じたことを忘れられない。

【写真】ドイツ人映画監督、ドーリス・デリエさん

「見続けていると、“エモーショナルな知性”を持った方だな、と感じました。キャラクターに対して説明過多になるのではなく、一歩引いて内側から必要最低限のものだけで表現する。それが正確無比なので観る人にきちんと響くんです」

 1980年代に初めて訪れて以来、日本に魅せられ、日本を舞台にした作品を世に送り出してきた。樹木さんの遺作となった最新作「命みじかし、恋せよ乙女」は日本で撮影した5本目の作品だ。アイデアが浮かんだのは、前作のジャパンプレミアで日本を訪れたとき。是枝監督が登録有形文化財である旅館「茅ケ崎館」で脚本を執筆していることを知り、自分も足を運んでみたい、と思った。茅ケ崎館は、小津安二郎の定宿だったことでも知られる。

「小津が執筆していた部屋を見せて下さいとお願いしたら、女将さんに『ほかにお客さんもいないので、泊まっていっていいですよ』と言われて」

 小津が過ごした部屋から目にしたもの、そして女将さんとのやり取りからインスピレーションを得て、すぐに脚本を書き始めた。断られたときのショックが大きいこともあり、普段は絶対に当て書きはしない。

「けれど、キャスティングを考え始めると『女将さんを演じるのは樹木さんしかいない』と強く思ったんです」

 ドイツに戻り、脚本を樹木さんに送ると、約1週間後には快諾の返事が来た。日本での主な撮影は、2018年7月の約10日間。樹木さんが亡くなる2カ月ほど前だ。長い距離を歩いたり、物を運んだりする動きは、痛みを感じるので難しい。予めそう樹木さんからは聞いていた。けれど、撮影中は俳優魂を感じることも多かったという。


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