2013年、アメリカの有名な音楽賞で、白人歌手ケイティ・ペリーが着物風の衣装で登場。鳥居や和傘、太鼓といった演出をした舞台で、お辞儀やすり足を織り交ぜたパフォーマンスを披露した。英語圏では文化の盗用だと非難の嵐が起きたが、日本では「なぜか炎上」「的外れな指摘」という反応が目立った。ケイティ・ペリーはのちに「日本文化を称揚する意図だったが、誤ったパフォーマンスをした」と反省の弁を述べている。

 米ボストン美術館は15年、クロード・モネの絵画「ラ・ジャポネーズ」の前で、レプリカの着物を試着して記念撮影するイベントを開催。だが、エキゾチックなものとして着物をもてあそび、人種差別的ステレオタイプを助長するという抗議を受けて、試着を取りやめた。これに対して、「イベントの再開を」「人種差別じゃない」「日本文化をシェアして」と着物姿で応援する人たちも現れた。実はこの撮影イベント、絵画が日本を巡回した際、世田谷美術館や名古屋ボストン美術館で「ラ・ジャポネーズでハイ!ポーズ」の題で催され、好評を博していた。

 白人モデルのカーリー・クロスは17年、芸者風の衣装でファッション誌ヴォーグを飾った。酒樽や力士風の男性と写真に納まる姿に、英語圏では「西欧が大好きな“エキゾチックでエロチックで従順な日本人女性”というステレオタイプを強化し、商業利用している」という批判が起きたが、日本では「トップモデルが着物風の服を着て世界のヴォーグに載るのって素敵」「白人が芸者の格好をしてくれてとても嬉しい」などの反応も多かった。後にカーリー・クロスは「私自身のものではない文化を盗用するものです。文化的な配慮の欠けた撮影に参加したことを心よりお詫びします」と謝罪している。

●背景に流れる「名誉白人感」異文化取り込む柔軟さも

 この差はどこから来るのか。そもそも日本文化は、海外から来た文化を柔軟に「いいとこ取り」してきた。食文化が典型。カレーライスはインド発祥、ラーメンは中国にルーツがあるが、どちらも現在は「国民食」となり、日本の味として海外進出している。

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