2019年7月16日からこう変わった(AERA 2019年7月29日号より)
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長期保有優遇制度がある人気優待株の例(AERA 2019年7月29日号より)
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東証1部の大型株・配当利回りランキング(AERA 2019年7月29日号より)
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 7月16日から株の手続きが1日短縮された。いわゆる「老後資金2千万円不足」問題で 投資に踏み出す人が増える今、長期投資が注目されている。

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 株の配当や優待をもらうための“購入締切日”があることをご存じだろうか。株主としての権利がもらえる最終売買日という意味で「権利付き最終日」というのだが、この期日が7月16日から変更になった。

 これまで決算月の月末(一部の企業は20日)から数えて4営業日前までに株を買えば配当や優待がもらえたが、1日短縮されて3営業日前に。株式市場の内部手続きが迅速化されたわけだ。意外に知られていないが、証券会社などを通じて株を買った瞬間に株主になるわけではなく、その3営業日後に正式に株主名簿に名前が記載される。この日を権利確定日という。

「既に欧米の大半の地域では、株の購入日から権利確定日までの日数が短縮されています」(岡三証券シニアストラテジストの小川佳紀さん)

 紙に印刷された株券がペーパーレス化法により2009年1月に廃止されて今年で10年。すでに株式そのものは電子化されているので3営業日でも遅いぐらい、とは市場関係者の弁だ。

 配当金や株主優待は、権利確定日の1日だけ保有していれば、権利を得られる。実際に配当や株主優待目当てで権利付き最終日のみ保有し、すぐに売却する人もいる。しかし最近は、個人に長く自社の株を保有してもらうため、長期保有優遇制度を実施する企業が増えている。現在約400社。優待実施企業全体の約27%に及ぶ。3年以上連続して保有する株主(株主名簿に同一株主番号の記載)には優待内容をグレードアップして優遇するパターンが多い。

 投資に興味を持つ個人は増えており、楽天証券では資産運用セミナーへの参加者が増加、NISAやiDeCo口座への申し込みも約2倍になったという。

「金融庁金融審議会の市場ワーキング・グループによる『高齢社会における資産形成・管理』報告書をきっかけに投資に興味を持ち始めた方が増えたのだと思います」(楽天証券広報)

 投資ビギナーが関心を示すのは、高配当株や優待株、コストの安い投資信託が多い。株式市場に上場しているのは19年7月現在、約3700社。このうち配当を出している企業は約3100社、株主優待を実施している企業は約1500社ある。日本株は短期的な変動こそあるものの、ここ2年は日経平均株価2万円台をキープしている。配当利回りを調べてみると、時価総額3兆円以上の超大企業だけに絞っても4~6%の株が多数存在する。

 長期投資は四六時中株価に注目する必要がないため、忙しい人でも無理なくできる。長期保有を前提に、企業の成長や配当、優待に注目するのも一案だ。(ライター・伊藤忍、編集部・中島晶子)

AERA 2019年7月29日号

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中島晶子

中島晶子

ニュース週刊誌「AERA」編集者。アエラ増刊「AERA Money」も担当。投資信託、株、外貨、住宅ローン、保険、税金などマネー関連記事を20年以上編集。NISA、iDeCoは制度開始当初から取材。月刊マネー誌編集部を経て現職

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