作家・森絵都が新作『カザアナ』で描いた「小説らしい手法で描く未来の日本」 (1/2) 〈AERA〉|AERA dot. (アエラドット)

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作家・森絵都が新作『カザアナ』で描いた「小説らしい手法で描く未来の日本」

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森絵都(もり・えと)/1968年生まれ。90年、講談社児童文学新人賞を受賞しデビュー。2006年『風に舞いあがるビニールシート』で直木賞を、17年『みかづき』で中央公論文芸賞を受賞。7月24日19時から東京の丸善・丸の内本店でサイン会を開催(撮影/伊ケ崎忍)

森絵都(もり・えと)/1968年生まれ。90年、講談社児童文学新人賞を受賞しデビュー。2006年『風に舞いあがるビニールシート』で直木賞を、17年『みかづき』で中央公論文芸賞を受賞。7月24日19時から東京の丸善・丸の内本店でサイン会を開催(撮影/伊ケ崎忍)

カザアナ

森 絵都

978-4022516145

amazonamazon.co.jp

『カザアナ』は、平安時代に生きていた不思議な能力を持つ風穴たちの末裔(まつえい)が近未来の日本である家族と出会い、息苦しい世界のなかで小さな奇跡を起こしていく物語だ。著者の森絵都さんに、同著に込めた思いを聞いた。

*  *  *
 分厚い本の冒頭を読み始めた時、平安時代の宮中で起きた不思議な出来事の描写と古典文学の香り漂うたおやかな文章に、「おお、今度の作品は平安時代を舞台にした伝奇小説か」と期待が高まった。だがそれは、すぐ驚きに変わった。次の章の舞台が近未来の日本で、スピード感あふれる文体に乗って街を疾走していく中学生の少女だったからだ。

 少女の名は里宇(りう)。母・由阿(ゆあ)、弟・早久(さく)と共に、いかにも外国人が好みそうな日本風の景勝区に暮らす。日本はすでに「観光立国」として生きる道を選んだ超・監視社会である。

 森絵都さん(51)は、

「近未来の日本には今の不安を投影させました。今の日本にはもやもやと窮屈な感じがあって、日本至上主義の空気も漂っていますね。里宇と早久をアイルランドとのクオーターに設定したのも、容貌が違うために『なりたくても普通の日本人にはなれない存在』にしたかったからです」

 と話す。ある日、里宇は園芸会社を営む3人の男女(実は自然を読む特殊能力を持つ「風穴」の末裔)と出会う。彼らに荒れた庭の手入れをまかせてみると、さまざまな生命が躍動し始める。不登校だった早久も外に出て動き出すのだ。

「人間は、空が晴れていたり、緑が揺れていたり、蝶が飛んでいたりするだけで心が楽になるもの。風穴たちはその媒介者です。彼らはふだん人間が意識していないものを具象化していく役目を果たしているんです」

 やがて一家と風穴たちは謎のゲリラ組織・ヌートリアとの戦いに巻き込まれていく。最後に米国大統領まで登場する展開には驚かされるはずだ。

 登場人物の中では由阿の存在感が際立つ。夫に裏切られたシングルマザーながら、いつも大胆でポジティブである。


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