「和食ならひょっとしたらいけるかもと思いました」(堀田さん)

 1年もすると事業は軌道に乗り、1日100食程度出るようになったが、今度は仕込み地獄にはまった。

「おかずの品数が多いのと、和食は調理工程が多いため手間がすごくかかるんです。やってもやっても終わらず、夜、泣きながら作業する日が続きました」

 フードトラックの営業時間は昼の2時間半ほど。一見、コスパのいい仕事に見えるが、そうでもない。堀田さんは朝5時に起床。80合のご飯炊きなど朝の仕込みをして、10時半ごろ現場に入り、14時に営業が終了した後も仕事は続く。買い物、洗いもの、経理作業、そして夜の仕込みだ。先の二郎系麺の国井さんもこう言う。

「フードトラックは労働集約型の仕事だと、始めてみて思いました。僕も1日16時間くらい働いています。移動時間も意外とばかになりません」

 堀田さんは夫が仕込みのサポートに加わることで苦境を脱却。さらに車をもう1台増やし事業を拡大している。

「暑いですね」
「熱中症になりませんか?」

 気温が30度を超えた取材の日、そんなやりとりが交わされ、ドリンクや塩飴を差し入れされるフードトラックもあった。フードトラックは料理人と客の距離が近い。「おいしかった」のひと言を伝えるため再来店する客は少なくなく、そのひと言が彼らの励みにもなっている。東京だけでもフードトラックの数は約3千台。こだわりの味はフードトラックの数だけある。店主の個性もあわせてご賞味あれ。(編集部・石田かおる)

AERA 2019年7月15日号より抜粋