今回の問題をいち早くツイッターで周知させたサンフランシスコ在住の動画・ARクリエイター大石結花さんは、こう指摘する。

「カーダシアンさんは、世界的なポップカルチャーの中心人物。今後、kimonoの言葉が日本の着物ではなく、彼女のブランド名と認識する人や世代が出てきても、まったくおかしくないくらい影響力がある。商標が取れなくても、ブランド名が残れば、世界的認知の観点からかなり危険な状況です」

 日本では馴染みが薄いカーダシアンさんだが、米国のリアリティー番組「カーダシアン家のお騒がせセレブライフ」で人気となった世界トップクラスのインフルエンサーの一人。フォロワー数は、インスタグラムが約1億4000万、ツイッターは約6110万と桁外れだ。2014年には人気ラッパーであるカニエ・ウェストさんと結婚。ゲームアプリやコスメブランドをヒットさせている実業家だ。総資産は400億円近くあるとも言われ、彼女を含むセレブ集団のカーダシアン一家は、「カーダシアン帝国」と呼ばれるほど、影響力は大きい。

 カーダシアンさんは、27日付のニューヨーク・タイムズ紙に「日本の文化における着物の重要性を理解し、深い敬意を持っている」とコメントしつつ、「ブランド名を変えるつもりはない」と宣言した。抗議行動を起こす人たちが不安を感じるのは、カーダシアンさんが、過去にもアフリカ系アメリカ人などの文化を盗用したとして度々、批判されているからだ。
 実際、抗議行動を起こす人たちの不安は、現実のものになりつつある。インスタグラムのkimonoアカウントは、29日時点でフォロワー数11万8000に達した。しかも、コメント欄に書き込まれた抗議コメントは、ものの見事に削除され続けている。

 インスタグラムは写真をメインにするSNSだ。アカウント名と補正下着の写真だけを見させられていれば、kimonoイコール補正下着と刷り込まれるだろう。着物の世界的な認知度は、日本人が思うほど高くはない。

次のページ