子なし夫婦の記者も遺言書作成に挑戦。事実婚の場合もお互い法定相続人にはなれないので、パートナーに財産を相続させたい場合は遺言書を作成するとよい(撮影/写真部・掛祥葉子)
子なし夫婦の記者も遺言書作成に挑戦。事実婚の場合もお互い法定相続人にはなれないので、パートナーに財産を相続させたい場合は遺言書を作成するとよい(撮影/写真部・掛祥葉子)
【日本財団ドネーション事業部遺贈寄付サポートセンター チームリーダー】木下園子さん/日本財団への遺贈は間接経費などが引かれず全額社会貢献に使われる。活用する事業は遺贈者の遺志に沿って選定。養護施設卒園者への奨学金給付や障害者の就労支援などさまざまな活動に使われている(撮影/工藤隆太郎)
【日本財団ドネーション事業部遺贈寄付サポートセンター チームリーダー】木下園子さん/日本財団への遺贈は間接経費などが引かれず全額社会貢献に使われる。活用する事業は遺贈者の遺志に沿って選定。養護施設卒園者への奨学金給付や障害者の就労支援などさまざまな活動に使われている(撮影/工藤隆太郎)

 人生の後半にするイメージが強い生前整理だが、40代から準備しておくことが望ましい。親の介護や生前整理で自分のことが後回しになってしまい、気づいたら自分も老後ということになりかねないからだ。そんな生前整理の一つとして、遺産を寄付する「遺贈」が注目を集めている。具体例をあげて解説しよう。

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 前回に続き、亜江良(あえら)太郎さん(45)と妻の花子さん(42)を例に紹介しよう。花子さんは一人っ子だ。両親も亡くなっており、夫の太郎さんに先立たれると、遺産を相続する相続人は誰もいないことになる。法定相続人がいない場合、遺言書を作成しないと、遺産はすべて国庫に帰属される。

 子どもを持たなかった花子さん。できれば次世代の子どもたちのために、少ないながらも自分の遺産を使ってもらいたいと思い、財団への遺贈を考えた。

「遺贈」とは、自分の財産を相続人以外の個人や団体に遺言書によって譲ること。日本財団遺贈寄付サポートセンターでは、遺贈寄付に関する相談を受け、遺贈先の選定や遺言書作成をサポートしている。

 設立のきっかけは、10年度に匿名の大阪の女性から1億5千万円の遺贈があったこと。この遺贈では「海外の恵まれない子どもたちのために」という女性の遺志を尊重し、ミャンマーで障害児支援の施設を建設した。チームリーダーの木下園子さんに、遺贈に必要な手続きを聞いてみた。

「遺贈するためには、その旨を書いた遺言書が必要です。無事に遺言が執行されるよう、遺言執行人を決めることも必要ですね。残される財産に、団体によっては受け入れられないものもあるので、遺贈したい先の団体に事前に確認することもお勧めしています」

 日本財団では、不動産や有価証券などは現金に換価の上で受けている。山林や田畑、古家や未公開株など、売却が難しいものは受け取れない場合もあるという。

「法定相続人がいらっしゃる場合は遺留分を侵害しないような形での遺贈を、ということをお伝えしております」

 これまでで4千件以上の資料請求があり、その件数は年々増えている。日本財団を遺贈先にするという遺言書の件数も、16年度で17件、17年度で27件、18年度で37件と徐々に増えてきている。

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