陸上男子100Mの五輪代表争い(AERA 2019年5月27日号より)
陸上男子100Mの五輪代表争い(AERA 2019年5月27日号より)

 サニブラウン・ハキーム選手が日本出身選手として2人目の9秒台を記録した。サニブラウン選手のみならず、日本陸上男子100メートルにはメダル圏内の選手がひしめき合っている。個性や強みの異なる各選手への期待の声も大きい。

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 5月12日、アメリカからうれしいニュースが飛び込んできた。

 城西大城西高(東京)を卒業し、フロリダ大に進学したサニブラウン・ハキーム(20)が100メートルで9秒99のタイムをマーク。日本出身の選手としては9秒98の日本記録を持つ桐生祥秀(23)に次ぎ、2人目となる9秒台に突入した。

 東京五輪を来年に控え、いま日本では陸上男子100メートルに対する熱が高まっている。

 オリンピックでは決勝が行われる2019年8月2日夜のチケットの値段は13万円。あらゆる競技のなかで最高額の値段設定だ。史上初めて、日本人が100メートルでメダルを獲得する瞬間を見たいという期待が値段にも反映された格好だ。

 メダル獲得は徐々に現実味を帯びてきた。サニブラウンの記録は今季世界5位に相当する。3月23日に10秒08をマークした桐生は今季13位。複数の日本選手が決勝の舞台に立つ可能性は間違いなく高まっている。

 ところが、サニブラウンや桐生にしてもオリンピック代表の座が確実かといえば、そうとも言い切れない。オリンピックに出場できるのは各国3人まで。現在の日本には、10秒08以内の自己ベストを持つ選手が6人もおり、予断を許さない戦いが続くのだ。

 その有力候補だが、各選手の走りが「キャラ立ち」しているのが面白い。

 100メートルはおよそ10秒で勝負が決まるが、そのわずかの間にさえスタイルがある。大まかには、「スタートダッシュ型」「中間加速型」「後半型」と三つのタイプに分けられる。

 中でも多田修平(22)はスタートを得意とする。17年の世界陸上の準決勝ではウサイン・ボルト(32)と同組で走り、スタートでは多田が体一つ前に出ていた。ただし、昨季から爆発的なスタートが鳴りを潜めており、復活が待たれる。

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