「表面利回りが高すぎる物件は不動産業界では“ハイリスク”とみなされます。たとえば企業でいうと、経営状態が悪くて株価も低いのに、いちおう配当だけ出しているような企業は異常に配当の利回りが高くなりますが、それと似ていますね」(同)

 そういった企業は、いつ倒産してもおかしくない。マンションの場合も、人気がどんどん落ちて物件価格が下落しているのに、賃料の落ち方が少しゆるやかだと、相対的に表面利回りが上がっていく。そういった物件は、近い将来に賃料も下がり、ほどなくして空室が増え、“稼げない物件”になる可能性が高いのである。

 利回りで買っては売る人たちは物件を投資という目線でとらえている。自分自身が住む物件は金儲けが目的ではないが、20年以上の長い付き合いになるなら「将来、売れる・貸せる家」という投資の思考も、購入時に少し取り入れたほうがいい。

 リセールバリューの高いエリアも、ライフスタイルによって移り変わるもの。住宅過剰社会の現状や空き家問題を実地調査してきた、東洋大学教授の野澤千絵さんがアドバイスをくれた。

「マンションの場合、駅近や、都心アクセスといった立地条件だけでなく、しっかりした管理体制が維持されていて長期的な修繕計画が立てられているかをチェックすることも大切です。街や駅は長い歳月をかけて変化する生き物。実際に購入したい物件がある駅を歩いて、いろんな世代が住んでいるか、建物の用途が多様で発展する余地があるかなどを見極めましょう」

(経済ジャーナリスト・安住拓哉、編集部・中島晶子)

AERA 2019年4月22日号より抜粋

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中島晶子

中島晶子

ニュース週刊誌「AERA」編集者。アエラ増刊「AERA Money」も担当。投資信託、株、外貨、住宅ローン、保険、税金などマネー関連記事を20年以上編集。NISA、iDeCoは制度開始当初から取材。月刊マネー誌編集部を経て現職

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