アメリカで暮らす日本人女性で、1児の母である灰みみさん(37)もファンの間で一目置かれる存在だ。息子(7)のために作ったジオラマが評判を呼び、2017年のおもちゃショー、そして前出の松屋の展覧会にもコーナーが設けられ出品した。

「日本で生まれ育ち、子どものころは野山で生物とか植物の観察や探検に明け暮れ、家にいるときは工作ばかりしていました」(灰みみさん)

 欧米には伝統的なドールハウスの文化がある。そのなかでシルバニアファミリーはどのように受け止められているのだろうか。灰みみさんは話す。

「アメリカではドールハウスはどちらかというと年齢が上の方の趣味という感じです。これに対しシルバニアは常に時代に寄り添い、古めかしさがない。おもちゃならではのデザイン性や子どもへの安全性の配慮もあって、ドールハウスなど“小さい世界への入り口”になるものだと思います」

 シルバニアには伝統的なドールハウスと決定的に違う点がある。それも灰みみさんには魅力だ。家や家具ではなく、人形をメインに据えている点だ。

「ジオラマを作り終え人形をおくと、そこに命が吹き込まれる。その瞬間が一番好きです」

 手の中に収まる、かわいいサイズのシルバニアの動物たち。持つとフサフサの毛やフワフワの尻尾の手触りに癒やされる。その心優しき穏やかな世界が世代や国境を超え、静かに人々を結びつけている。(編集部・石田かおる)

※AERA 2019年4月1日号