渋谷駅の東京メトロ銀座線改札口に出現したワンキャリアの壁面広告。足を止めて見入るリクルートスーツ姿の学生もいた(写真:ワンキャリア提供)
渋谷駅の東京メトロ銀座線改札口に出現したワンキャリアの壁面広告。足を止めて見入るリクルートスーツ姿の学生もいた(写真:ワンキャリア提供)
インターンの種類(AERA 2019年3月25日号より)
インターンの種類(AERA 2019年3月25日号より)

 就活シーズンがスタートし、街にはリクルートスーツ姿の学生が目立つにようになった。今年の就活を語るうえで、欠かせないのがクチコミによる「就活の民主化」だ。

【表を見る】一口にインターンと言っても4つのタイプがある

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「インターン」と並んで、今年の就活でもう一つ注目される動きがある。

 3月1日から14日まで、東京・渋谷駅の銀座線改札前に突如出現した壁面広告に目を留めた人もいるだろう。大きく書かれた「#ES公開中」の文字。その横のラックからは、人気企業の選考を通過したエントリーシートのコピーが取り放題。同時にネット上でも3万6千件の通過ESを無料公開──。

 このキャンペーンを仕掛けたのは「ワンキャリア」。東大・京大生の7割、早慶上智MARCH生の6割が登録する就活クチコミサイトだ。キャンペーンの狙いはこれまでの就活のあり方に一石を投じることだ、と同社経営企画室の寺口浩大さんは言う。

「ESを大量に書く時間が、本当に就活生に必要でしょうか。彼らは受かるためだけの作業にエネルギーを使ってしまっている。通過ESを参考にすることで、もっとキャリアについて本質的に考えを深めることに時間を使ってほしい」

 3年の3月からの数カ月という短期決戦の中で、学生たちは各企業に合わせて、多少の嘘も織り交ぜつつ、大量のESを書かされている。合格基準も明らかにされない中で「正解」を手探りするストレスは相当なものだ。ESが公開されるからといって、コピペするなどは論外で採用担当者にもすぐにばれるが、ネット上には「これまで先輩からもらったりするしかなかったので、ありがたい」といった歓迎の声が目立った。寺口さんによると企業の人事担当者からも予想以上に賛同の声が寄せられたという。

 ワンキャリアには、通過ESだけでなく、面接で聞かれる内容やインターンの実情など10万件を超えるクチコミが集まる。

「私たちは、多くのクチコミを集めた上で整合性が取れるまでヒアリングして信憑性を確保している。これまで採用マーケットには『企業側が一方的に出す聞こえのいい情報』と、『個人が発する信憑性の薄い情報』の2種類しかなかった。信頼できるクチコミデータでその状況に風穴を開けたい」(寺口さん)

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