東浩紀、ニコ動「復活にはかなりのアクロバットが必要だろう」

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東浩紀

2019/02/28 16:00

東浩紀(あずま・ひろき)/1971年、東京都生まれ。批評家・作家。株式会社ゲンロン代表。東京大学大学院博士課程修了。専門は現代思想、表象文化論、情報社会論。93年に批評家としてデビュー、東京工業大学特任教授、早稲田大学教授など歴任のうえ現職。著書に『動物化するポストモダン』『一般意志2・0』『観光客の哲学』など多数
東浩紀(あずま・ひろき)/1971年、東京都生まれ。批評家・作家。株式会社ゲンロン代表。東京大学大学院博士課程修了。専門は現代思想、表象文化論、情報社会論。93年に批評家としてデビュー、東京工業大学特任教授、早稲田大学教授など歴任のうえ現職。著書に『動物化するポストモダン』『一般意志2・0』『観光客の哲学』など多数
2018年のニコニコ超会議。来場者は過去最高だったが、ニコニコ動画離れでネット視聴者数は減少していた (c)朝日新聞社
2018年のニコニコ超会議。来場者は過去最高だったが、ニコニコ動画離れでネット視聴者数は減少していた (c)朝日新聞社

 批評家の東浩紀さんの「AERA」巻頭エッセイ「eyes」をお届けします。時事問題に、批評的視点からアプローチします。

*  *  *
 出版・IT大手のカドカワの川上量生社長が退任した。ニコニコ動画(ニコ動)で知られるドワンゴが、出版社であるKADOKAWAの子会社になることも発表された。

 カドカワは、KADOKAWA(旧角川書店)とドワンゴが5年前に経営統合したときに作られた親会社で、川上氏はドワンゴの創業者である。したがってこの発表は、対等合併の前提が崩れ、ドワンゴが旧角川書店に呑み込まれたことを意味している。つまりITが出版に負けたのである。

 ニコ動は2006年に開設された動画共有サービスで、ゼロ年代後半のポップカルチャーの牽引役となった。日本独自の大衆文化は、いまやクールジャパンと呼ばれ世界的な注目を浴びているが、そのなかには「初音ミク」を筆頭にニコ動発のものが少なくない。

 けれどもその成功もこの数年は陰りが出ていた。現在の動画共有サービスは、YouTubeをはじめとする海外企業に加え、SHOWROOMのような新興勢力も参入し、きわめて競争が激しい。そのなかでドワンゴは、競合他社を意識するあまりに方向性を見失い、古くからのユーザーの離反を招くという悪循環に陥っていた。ニコ動の有料会員数は16年をピークに急減し、最近は悪い評判が目立っていた。今回の組織再編は直接にはスマホゲーム開発の失敗によるものだが、似た結末は多くのユーザーが予感していたのではないかと思う。

 ぼくはこのニュースにたいへん残念な思いを抱いている。ニコ動は世界に類例のないサービスである。その文化的功績はきわめて大きく、独自の設計が生み出したコミュニケーションは政治的可能性すら感じさせた。ぼくはそれについて本まで書いたことがあるが、似た期待を寄せた同世代は多かったはずだ。けれども、その期待は育つことがなかった。新体制でのニコ動の位置付けは不透明だが、復活にはかなりのアクロバットが必要だろう。

 川上氏はしばらく実業を退くという。最近は政治的発言や行政への働きかけが目立っていた氏だが、もういちどエンジニアの原点に戻り、夢を見せてもらいたいと願っている。

AERA 2019年3月4日号

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東浩紀(あずま・ひろき)/1971年、東京都生まれ。批評家・作家。株式会社ゲンロン取締役。東京大学大学院博士課程修了。専門は現代思想、表象文化論、情報社会論。93年に批評家としてデビュー、東京工業大学特任教授、早稲田大学教授など歴任のうえ現職。著書に『動物化するポストモダン』『一般意志2・0』『観光客の哲学』など多数

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