だからこそ、従来主流だった一方的な情報伝達のスタイルから、業績の進捗を公にしたり、社員個々のプライベートを語り合ったりする場に変えている。狙いは同僚や配属部署、会社への帰属意識をより高め、定着率や労働生産性を上げるためだ。長年続ける会社も、このところ時流を先取りして内容を変えている。

 午前8時30分。工業団地の一角の工場内で「朝礼」が始まる。ヒーターの製造メーカー、スリーハイ(横浜市)は18年に、勤務終了から翌日の出社まで9時間以上の休息を確保する勤務間インターバル制度を導入。残業を減らす一方で、組織の求心力を保つためにも朝礼を毎朝行う。09年に現社長が就任し、13年に内容を大幅リニューアルした。

 8人の社員全員が参加し、ストレッチ、フリートーク、クレド(会社の信条)についてのディスカッション、会社や各部署の業務の進捗や課題、各社員の1日の予定、退社予定時刻の宣言で締めくくる。毎回、内容を少しずつ変えて、30分~1時間に及ぶ。発言の順番は、マンネリを防ぐために冒頭で司会の中山勉さん(34)がサイコロを振り、出た目の数で変える。

 07年に中途採用で入社した営業担当の松本英嗣さん(45)は「フリートークで互いのプライベートがわかり、楽しい」と話す。10年に中途入社した斎藤恭子さんは育児と両立させながら、総務を担当する。「朝礼で互いの素顔を知ることで、仕事の協力が進む」。社員全員の残業時間は16年に月平均で50~60時間だったが、翌年には30時間前後に減った。

 社長の男澤(おざわ)誠さん(49)が語る。

「リニューアル前は工場長がひとりで話し、社員は黙っていた。今は社員の意識がひとつになりつつある」

(ジャーナリスト・吉田典史)

AERA 2019年2月18日号より抜粋