稲垣えみ子(いながき・えみこ)/1965年生まれ。元朝日新聞記者。著書に『寂しい生活』『魂の退社』(いずれも東洋経済新報社)など。『もうレシピ本はいらない 人生を救う最強の食卓』(マガジンハウス)も刊行
稲垣えみ子(いながき・えみこ)/1965年生まれ。元朝日新聞記者。著書に『寂しい生活』『魂の退社』(いずれも東洋経済新報社)など。『もうレシピ本はいらない 人生を救う最強の食卓』(マガジンハウス)も刊行
まだ軽いなあと悩んでいるところ。石は某田舎で拾ってきた。都会には案外石一つない(写真:本人提供)
まだ軽いなあと悩んでいるところ。石は某田舎で拾ってきた。都会には案外石一つない(写真:本人提供)

 元朝日新聞記者でアフロヘア-がトレードマークの稲垣えみ子さんが「AERA」で連載する「アフロ画報」をお届けします。50歳を過ぎ、思い切って早期退職。新たな生活へと飛び出した日々に起こる出来事から、人とのふれあい、思い出などをつづります。

【写真】沢庵漬けの様子はこちら

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 沢庵漬けに初挑戦しております。イヤ正直こんなものにまで手を出すつもりはなかったんだが、夏に梅農家へ収穫の手伝いに行き、ご褒美に梅10キロもらってホクホク帰っていざ梅干しにしようとしたら家中の容器を総動員しても漬けきれず、近所の金物屋で巨大漬物容器を買うはめに。か、かさばる……。最小の物しか入らぬ我が極小住宅のメンバーとしては存在感ありすぎです。となれば、是が非でも梅干し以外にも活躍してもらわねばならぬ。で、沢庵!

 やってみたら案外簡単であります。

 大根を丸ごとベランダにほったらかしておき、10日ほど経ってシナシナになったところで塩とヌカを混ぜたものに漬けて重しをする。え、それだけですかと戸惑うシンプルさ。しかも大根は1本100円だし、ヌカはほぼタダ。塩は良いものを使いましたがそれでも100円程度。つまりはほぼ無料レベルで、ご飯のおかずにも酒の肴にもテッパンのタクアンができてしまう(らしい)。

 しかし。一つ大きな問題が発生したのでした。

「重し」です。調べたところでは、タクアン作りのポイントは重~い重し。大根の倍の重さが必要らしい。シナシナの大根6本は計3キロ。最低6キロの重しがいる。もちろん金物屋には「漬物の重し」なるものも売っておりますが、これ以上モノを増やすのでは本末転倒です。

 ということで我が家の「重そうなもの」を総点検。まずは、小さな陶製漬物容器の重しと、拾ってきた石のダブル攻撃。しかしこれでは足りず、そうだ漬物容器ごと(陶製なので重い)入れればいいじゃんと思いつき、早速やってみたけどまだちょっと軽いんだよなあ……。

 そうだ! この重しがわりの漬物用器に中身を入れればいいじゃないか、つまりはこの中でも漬物を作っちゃえばいいじゃん! 塩をした白菜をぎゅうぎゅう詰めたらいい感じで重くなりました。これぞ一石二鳥。私って天才! と思ったので思わず書いた(笑)。人生は自画自賛。

AERA 2019年2月11日号

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稲垣えみ子

稲垣えみ子

稲垣えみ子(いながき・えみこ)/1965年生まれ。元朝日新聞記者。超節電生活。近著2冊『アフロえみ子の四季の食卓』(マガジンハウス)、『人生はどこでもドア リヨンの14日間』(東洋経済新報社)を刊行

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