秋篠宮さま(左から2人目)の6歳の誕生日を前に、一家で絵本を囲んだ/1971年11月29日、東京・元赤坂の東宮御所で (c)朝日新聞社
秋篠宮さま(左から2人目)の6歳の誕生日を前に、一家で絵本を囲んだ/1971年11月29日、東京・元赤坂の東宮御所で (c)朝日新聞社

 詩や物語に造詣が深いことで知られる美智子さま。実は被災地の子どもたちに絵本を届けられていた。親交の深い人物が明かすエピソードとは? ノンフィクションライターの歌代幸子氏がレポートする。

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 2010年に父の郷里である岩手県に移住した編集者の末盛千枝子さん(77)は東日本大震災後、「3・11絵本プロジェクトいわて」を立ち上げた。全国から送られた本を被災地の子どもたちに届ける活動を始めると、美智子さまからもすぐに電話があった。

「私のところにも手元に2冊ずつある本がいくつかあるから、それを送ろうかしら」

 まもなく『三月ひなのつき』と『龍の子太郎』が届き、その後も、『ノンちゃん 雲に乗る』『おおきなかぶ』『Eraser けしゴム』……と2、3冊ずつ送られてきた。なかには、1998年にインドのニューデリーで開かれた国際児童図書評議会(IBBY)世界大会の基調講演で次のように語った、エッツ(『わたしとあそんで』)やレオ・レオーニ(『フレデリック』)のなどの作品もあった。

<もし子供を持たなかったなら、私は赤ずきんやアルプスのハイジ、モーグリ少年の住んだジャングルについては知っていても、森の中で動物たちと隠れん坊をするエッツの男の子とも、レオ・レオーニの「あおくん」や「きいろちゃん」とも巡り合うことは出来なかったかもしれないし、バートンの「ちいさいおうち」の歴史を知ることもなかったかもしれません。トールキンやC・S・ルイス、ローズマリー・サトクリフ、フィリッパ・ピアス等の名も、すでに子供たちの母となってから知りました>

 届けられた本は、19冊にのぼった。

「その時々にこまやかなお心遣いが感じられました。悲しみが癒えない子どもたちに寄り添う心温まる絵本、そして命の尊さや生きる力を描いた絵本が折々に届き、最後は手を尽くして探してくださったという『新美南吉全集』でした。それは『でんでんむしのかなしみ』へのオマージュでもあったのでしょう」 美智子さまが公務を離れるまであと4カ月足らず。

 親交を重ねる末盛さんは、「ジーヴズも2、3冊待機しています」という美智子さまのこれからの楽しみについて、こう語った。

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