要は、ここで紹介されている発想法は、誰もが簡単にできる方法ではないので、自分の仕事は安泰さ、と釘を刺しているわけだ。たしかに本の作りからして大御所らしく、図版もなくてなかなか難解。詳しくは本を購入してもらうとして、大ざっぱに理解したところ、そのアイデアを手に入れるための方法はざっとこうなる。

(1)資料を集め、(2) 咀嚼(そしゃく)する。次にアイデア出しから少し意識をそらし、無意識レベルで(1)(2)を(3) 孵化(ふか)。ふとした瞬間に(4)アイデアが誕生したら、(5)具体化して展開する、と。

例えば、ここ数日で深刻化する「朝、布団から出たくない」問題を例に、この本の発想法で解決するとしよう。まず(1)(2)。本が書かれた当時と違って、検索窓に「朝、布団、出られない」と入れれば、布団の誘惑で寝坊したという報告やら、いろんな人のオリジナルの解決法やらが山ほど出てくる。

 そうしてヒットした気になる情報を書き出したら、(3)ではアイデアのことはしばし忘れ、音楽や映画鑑賞、読書など「想像力や感情を刺激するものに心を移す」。事実というものは、「まともに直視したり、字義通り解釈しない方が、一層早くその意味を掲示することがままある」からだという。

 ちなみに自分の場合はゲームだが、この手の逃避行動は言われなくてもよくやっている。「サボり」と思って後ろめたい気持ちになっていたけれど、なんだ。これも立派な「孵化」だったんじゃん。

 以上で仕込みは終了。アイデアの出現を待っていると、次の日の朝、まさに布団の誘惑と葛藤を繰り広げているときに、天の声が降りてきた。「起きる時間とともに布団のなかに冷たい空気を送り込め!」。同時に時間が来るとホースから冷風が出てくる、布団乾燥機の嫌がらせ版のような装置が頭に浮かんだ。

 そうなのよ。あのぬくぬくが罪なのよ。商品名は「オカンの布団めくり」、略して「オカめ」に決定。ひゃー、絶対起きそう。B級グッズ丸出しなのは気になるが、どっかのメガネくらいたくさんCMを打てば、イメージロンダリングもできると思う。ところが、億万長者を夢見たのもつかの間、そのまま突入した二度寝で、家の中が返品のホースで一杯になるイヤな夢まで見てしまう。はい、次の本!

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