内田良(うちだ・りょう)/1976年生まれ。名古屋大学大学院教育発達科学研究科准教授。「学校リスク」を広く発信。ヤフーオーサーアワード2015受賞。共著に『教師のブラック残業』『ブラック校則』など(撮影/写真部・東川哲也)
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 アエラが親や先生を対象に行ったアンケートでは、9割以上の人が学校に不自由さを感じていると回答した。学校を取り巻く「不自由」の原因は何なのか。内田良・名古屋大学大学院准教授に話を聞いた。

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 学校を不自由にしているもののひとつに「保護者全般からの期待」があります。組体操は負傷事故を起こすほどに巨大化し、部活動もエスカレートする。教員が暴走することもありますが、他方で教員自身は「おかしい」と思っても保護者からの反対によってやめられないという声もよく耳にします。感動を呼ぶためです。

 また保護者の高学歴化も背景にあります。かつて教員はその地域の限られた大学卒業者だったりしましたが、相対的にその地位が下がり保護者の発言力が強まっています。

 加えて「聖職者意識」が教員を苦しめている。生徒のために献身する姿を誇りとし、社会も求めてきました。しかし約50年前に制定された「定額働かせ放題」の給特法とセットになって、過労死ラインを超す長時間労働を生み出してしまいました。

 その犠牲者は、実は生徒たちです。教員が生徒に十分に向き合う時間を持てないため一斉管理に走り、校則や管理に教員自ら疑問を抱いても、考えたり話し合ったりする時間がなく維持されてしまう。

 教員の過酷な実態が広まり志望者も減り始め、今年、全国最低の新潟県の小学校教員の志望倍率は1.2倍です。

 解消する鍵を握っているのは保護者です。教員が実質ボランティアで担っている部活動の時間は長すぎませんか? 地域のお祭りのパトロールを教員が休日返上でする必要はあるでしょうか? あまりにも多くを背負わされています。教員の多忙を理解し、子どもたちとじっくり向き合い豊かな学びを生み出す環境作りを一緒にしてほしいです。(編集部・石田かおる)

AERA 2018年12月10日号

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