「クイーンから離れた時期もあったんですけど、85年にTVでライブ・エイドを見て私の中で別格のバンドなんだって気づいたんです。映画館の狭い空間でフレディの声を大音響で聞いていたら、浄化された気分になって、いろんな曲をのこしてくれてありがとうって。私が信じて楽しんできた音楽に対して、それでよかったんだよって映画がほめてくれた気がしたんです」

 オールドファンがフレディとの再会を喜び、癒やされる一方で「もっと早く生まれたかった」と悔しがる若い世代もいる。子どもの頃、洋楽好きの父(68)にクイーンの存在を教えてもらった安藤ももさん(29)はその一人だ。

「映画が始まるファンファーレをブライアン・メイのギターで聞いたら鳥肌が立って。クイーンだけはバンドの成り立ちやメンバーの素性が気になっていたので、前のめりになって観ました。もう本物のフレディには会えないんだなっていう寂しさも感じて、見終わってから30分は泣いてました」

 安藤さんの父はまだ映画を観ていないが、「俺たちはクイーンはただ弾いて歌っているだけで十分だった。音楽以外のことをいちいち考えながら観ているお前はロックじゃない」と言われたことは胸に響いたという。

 初来日の75年、ドラマの主題歌にフレディの曲が起用された2004年に続き、日本で起きたクイーンブームは3回目。過去と違うのは、世代を結ぶきっかけになっていることだろう。数々の名曲が脳内で自動再生されてしまう麻薬のようなクイーン旋風は、まだまだ続きそうだ。(ライター・角田奈穂子)

※AERA 2018年12月3日号