AERA 2018年11月12日売り表紙に俳優の村上虹郎が登場
AERA 2018年11月12日売り表紙に俳優の村上虹郎が登場

 ぐっと踏み込まれてしまいそうに強い眼差しと、どこか繊細で危うい佇まい。弱冠21歳にして、俳優として独自の地位を確立しつつある村上虹郎さんに、デビューから最新作「銃」の撮影秘話まで、話を聞いた。

【写真】CMで受験生を後ろ姿だけで演じた村上虹郎

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 これほど「目は口ほどにものを言う」を体現する俳優も珍しい。

 父は俳優である村上淳(45)、母は歌手のUA(46)という両親のもとに生まれた。他人から見れば、天賦の才も、さもありなん。自分を表現して生きる道を選ぶのは自然のなりゆきのように思うが、本人は「俳優になるつもりはなかった」と振り返る。

「むしろ逆ですね。漠然とですが、芸能界に対する嫌悪感がありました。僕は長男で、下にきょうだいが3人いて。母親もだんだん下に行くにしたがって教育がわかっていったと思うんですけど、1人目の自分は失敗作というか。2人に謝られましたもん。『ごめんね、教育間違えた』って(笑)。完璧な親だったら、僕はできあがっていないので、それはそれでよかったと思いますが、反抗期のころはそんなことは思えない。失敗の原因こそ両親が芸能界に身を置いていたせいだ、そう思ってた時期もありました」

 ではどうして表現する世界に入ろうと思ったのだろうか。

「カナダに留学しているとき、親父から連絡が来て勧められたんです。『河瀬直美監督が映画を撮りたいんだって』って。じゃあ、やってみようかなぁと……。映画やドラマは好きで見ていたので、好奇心がわいた。それに『2つ目の窓』という作品は全然、芸能って感じがしなかった。ジャンルで言うと河瀬直美作品!でしたから」

 映画は、奄美大島の壮大な自然と文化を背景に、少年少女の恋と成長、脈々と続く命のつながりを描く物語。主役の少年に抜擢された村上は撮影の3カ月前から奄美で生活した。結果、島で暮らす、多感な少年そのもののようにスクリーンに登場し、鮮烈なデビューを飾る。作品はカンヌ国際映画祭のコンペティション部門に出品され、レッドカーペットも歩いた。

「素晴らしい現場でした。危険な体験もしましたし、いろんな問題はありました。でもそれだけの価値があった」

 しかし、俳優という仕事を続ける気はなかった。

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