「働き方」改革で働きやすさを追求するあまり弊害も起きている。コンサルタントの岩佐真裕子さんが語る。
* * *
働き方改革の旗印のもと、残業削減や在宅勤務の拡大など「働きやすさ」の改善が進んでいますが、働きやすさだけに注力する企業が多い点を懸念しています。例えばあるメーカーは徹底して残業を減らし、従業員の働きやすさは向上しましたが、現場の実態に寄り添うことなく推進されたことで経営層への不信感が増し、「やりがい」は下がったということがありました。
私が所属する調査研究機関グレイト プレイス トゥ ワーク インスティテュート(GPTW)ジャパンが行う「働きがいのある会社」の調査に参加した企業における業績を調べたところ、働きやすさのある職場よりも、やりがいのある職場のほうが業績がアップしていました。
調査では企業を、働きやすさとやりがいの高低で4タイプに分け、売り上げの対前年伸び率を分析しました。やりがいが高い「いきいき職場」は43.6%、「ばりばり職場」は22%伸びていました。興味深かったのは、やりがいが低い「ぬるま湯職場」が6%、「しょんぼり職場」は6.5%と同水準だった点です。働きやすさだけでは業績アップにつながらず、やりがいがカギを握ることがわかりました。
働きやすさの取り組みは目に見えやすい一方で、やりがいというのは見えにくく、置き去りにされがちです。働き方改革で重要なのは、まず会社のビジョンや目指すべきものなど、根本の部分がしっかりしており、それに基づいて推進すること。そうすれば何を大切にするか、何を削るかが明確化できます。
(編集部・深澤友紀)
※AERA 2018年9月17日号