ウィルフォワードのオフィスは神奈川・鎌倉。週1回はみんなでお昼ごはんをつくる。近くのビーチはランチや打ち合わせの場にもなる(撮影:石臥薫子)
ウィルフォワードのオフィスは神奈川・鎌倉。週1回はみんなでお昼ごはんをつくる。近くのビーチはランチや打ち合わせの場にもなる(撮影:石臥薫子)
SmartHRのメンバーが社内の会議で使う札。理解度や納得度が可視化でき、質問もしやすい(写真:SmartHR)
SmartHRのメンバーが社内の会議で使う札。理解度や納得度が可視化でき、質問もしやすい(写真:SmartHR)

 残業削減やテレワーク推進など目に見えやすい取り組みが注目されるが、「働きやすさ」が高まっても幸せに働けるとは限らない。ちょっとした工夫が社員の幸福度アップのカギを握っている。

【写真】SmartHRのメンバーが社内の会議で使う札

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 前野隆司・慶應義塾大学大学院教授によると、社員と職場の幸福度は「やってみよう!」「ありがとう!」「なんとかなる!」「あなたらしく!」の4因子がバランスよく満たされることが重要だという。

 だが、強みや弱みがわかっても、実際にどうしたらいいの?

 アエラではこの4因子を咀嚼(そしゃく)し、具体的にどんな取り組みがそれぞれの因子の向上につながるのか、ルールや制度、取り組みのある企業を取材した。

 会社から押し付けられた業務を嫌々こなし、その「我慢料」として給料をもらう──。仕事をそんなふうに考えている人もいるだろう。でも、仕事は1日の大半を費やすもの。会社のために働くだけでなく、趣味に没頭するように、自発的に仕事に取り組めたらどんなに幸せか。「やってみよう!」は成長と自己実現の因子で、従業員がやりたいことに打ち込めている、自分なりの目標ややりがいを見いだしている、目標に向かって学習や成長しようとしている、といったことが寄与する。

 社員がそれぞれやりたいことを仕事にする、そんなうらやましい会社がある。2011年創業のウィルフォワードだ。

 例えば代表の成瀬拓也さん(38)は、前職のコンサルタント経験を生かして企業の採用や組織変革などに関わる。マラソンの日本代表だった社員はランニングイベントの企画・運営支援などを、「劇団四季」で主演俳優だった社員は、人材育成研修を行うなど得意な分野で活躍している。成瀬さんは言う。

「指示や命令で『業務』としてやるのではない。優先されるのは個人の意志(ウィル)です」

 同社では、どんな生活をしたいか、社内外の誰と一緒に働きたいか、自分の人生の夢は何か、などを各自が自由に発想・発言し、自身の仕事や働き方をつくっていく。互いの価値観をさらけ出すので、メンバーは家族同様だという。その関係を象徴するかのようにオフィスは神奈川・鎌倉の一軒家だ。経費の上限もないが、

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