安倍首相陣営は9月5日、電話作戦など党員票獲得の選挙戦略を自民党本部で確認(撮影/写真部・小原雄輝)
安倍首相陣営は9月5日、電話作戦など党員票獲得の選挙戦略を自民党本部で確認(撮影/写真部・小原雄輝)
昨年の衆院選の選挙戦最終日、安倍首相は都内にあるJR秋葉原駅前で最終演説をした。安倍首相が壇上に立つと、聴衆が持つ日の丸が揺れた(撮影/編集部・澤田晃宏)
昨年の衆院選の選挙戦最終日、安倍首相は都内にあるJR秋葉原駅前で最終演説をした。安倍首相が壇上に立つと、聴衆が持つ日の丸が揺れた(撮影/編集部・澤田晃宏)
自民党の右傾化と安倍首相(AERA 2018年9月17日号より)
自民党の右傾化と安倍首相(AERA 2018年9月17日号より)

 1955年の結党以来、その大部分を政権の座に置く自民党安倍晋三首相は2度の野党時代を経験している。政権を奪還、維持するのに掲げた旗印が憲法だった。

【写真】昨年の衆院選の選挙戦最終日の様子はこちら

*  *  *

 6月、記者は安倍晋三首相(63)の側近議員と食事をする機会があった。昨年に引き続き「モリカケ問題」に荒れていた通常国会会期中のことだ。

「安倍首相はどんな人ですかと聞かれたら、どう答えるのですか?」

 当時の朝日新聞の世論調査では約7割の人がモリカケ問題に対する政府の姿勢に「納得できない」と答えるなど、安倍首相への不信感が大きくなっていた。答えに窮するかと思ったが、側近議員はこう即答した。

「めちゃめちゃ律義。支えた人は絶対に裏切らない。そこが小泉純一郎さん(元首相・76)との最大の違いだ。小泉さんは自身を支えた綿貫民輔さん(元衆院議長)を、郵政民営化では造反組だと切り捨てた。安倍さんならたとえ逆風でも、一生懸命にかばう。だからみんな安倍さんについていく」

 一方、逆らう者には党内の「安倍親衛隊」から「後ろから鉄砲を撃つな」とにらみが入る。目下の自民党総裁選では、安倍首相を支持しなければ「人事で冷遇する」「来年の参院選では公認しない」など、子どものけんかのような空中戦が続く。安倍首相の出身派閥の細田派では、所属議員に安倍首相を支持する誓約書まで書かせる始末だ。対抗馬・石破派のある議員は、

「今の安倍総理に求められているのは謙虚さや人の話を聞く姿勢なのに、『干してやる』とか『圧勝だ』とか、『安倍首相周辺』と報道される人たちって本当にセンスが悪い」

 そして、こう続けた。

「安倍総理自身が指示しているとは到底思えないこともある。最低でも大臣は当選6回なのに、石破派の、それも当時当選3回の齋藤健さんを農林水産相に抜擢するなど、総理自身はアメとムチを使い分けている。石破派でも人事で冷遇されている気はしない」

 第2次安倍政権発足から5年8カ月。当選12回のベテラン、船田元(はじめ)衆院議員(64)は「自民党は変わった」と語る。今年7月、参議院議員の定数6増に関する衆院採決を棄権し、党から戒告処分を受けた。

●「自民党は首相に何を言おうが自由だったんだ」

「『6増を許したら来年の消費増税の理解も得られない』と、複数の議員が私の思いに賛同していたが、行動には移さない。戒告処分より、自由に意見が言えない今の自民党に危機感がある」

 続けて船田議員に「安倍政権で変わったことは?」と聞くと、こう答えた。

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