稲垣えみ子(いながき・えみこ)/1965年生まれ。元朝日新聞記者。著書に『寂しい生活』『魂の退社』(いずれも東洋経済新報社)など。『もうレシピ本はいらない 人生を救う最強の食卓』(マガジンハウス)も刊行
稲垣えみ子(いながき・えみこ)/1965年生まれ。元朝日新聞記者。著書に『寂しい生活』『魂の退社』(いずれも東洋経済新報社)など。『もうレシピ本はいらない 人生を救う最強の食卓』(マガジンハウス)も刊行
通りがかりのお寺の貼り紙。きっとご住職も暑いのねと思わず笑ってしまいました(写真:本人提供)
通りがかりのお寺の貼り紙。きっとご住職も暑いのねと思わず笑ってしまいました(写真:本人提供)

 元朝日新聞記者でアフロヘア-がトレードマークの稲垣えみ子さんが「AERA」で連載する「アフロ画報」をお届けします。50歳を過ぎ、思い切って早期退職。新たな生活へと飛び出した日々に起こる出来事から、人とのふれあい、思い出などをつづります。

【写真】通りがかりのお寺の貼り紙には…

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 東京は秋の気配。猛暑の夏も去りゆくと思うとやはり寂しいものがある。なので今回は、記録の意味も込めまして、私なりに今年いろいろと考えさせられた「夏の過ごし方」の中でも最大の衝撃をお伝えしようと思います。

 それは、たまたま書店で購入した杉浦日向子さんの『一日江戸人』。エアコンも扇風機もない江戸っ子の夏の過ごし方という項目があり、それを読んでぶっ飛んだ。

 実は、読む前はちょっとナメておりました。だって私も似た境遇なのでそうそう負けておらんという自負があり、まあきっと打ち水とか風鈴とかそういう類いの話でしょうなと。ハイハイと。ところがもう全くそのような次元の話じゃなかったのでありました。

 江戸っ子は「暑い盛りに汗水たらして働くなんて野暮」と、ひと月ほどバカンスを取ったというのです。ナナなんと! フランス人か!? しかしそんなゼータクする余裕があったのかね? 宵越しの金は持たねえ江戸っ子じゃなかったのか?

 でもここがちゃんと考えられてまして、見るだけでも暑苦しい布団を質屋に入れてお金を借りりゃいいと。ナルホドそりゃ家も広くなって一石二鳥……にしても、それだけのお金でバカンスってそんなことできるの?

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稲垣えみ子

稲垣えみ子

稲垣えみ子(いながき・えみこ)/1965年生まれ。元朝日新聞記者。超節電生活。近著2冊『アフロえみ子の四季の食卓』(マガジンハウス)、『人生はどこでもドア リヨンの14日間』(東洋経済新報社)を刊行

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