日本銀行の統計では、国内銀行による「個人の貸家業」向けの新規融資額は、今年4~6月で5603億円と前年同期より2割以上減った。四半期の融資額としてはピーク時(16年7~9月期)の半分程度にまで縮小し、撤退ムードは鮮明だ。

 朝日新聞は7月、全国の地銀を対象に独自のアンケートを行った。個人がオーナーの賃貸物件向け融資残高が、日本銀行の金融緩和開始前の13年3月末からの5年で「増えた」とする回答は8割を占めた。伸びのめだつ物件は、ほとんどの銀行が「新築アパート」と答え、「中古1棟マンション」も多かった。

 融資拡大の理由は、相続税対策による需要増が最多で、老後不安などによる投資熱の高まりを指摘する声も多かった。15年の相続税の課税強化を受け、節税目的のアパート建設が急増したほか、将来不安を抱えるサラリーマンの不動産投資が活発化したのだ。日銀の超低金利政策のもとで利ざやを稼ぎにくい銀行各行が、金利が高めのアパートローンに活路を求めて積極姿勢に転じた面もあるだろう。

 一方、17年度の新規融資が前年度比で減った地銀は過半を占めた。理由には「賃貸住宅の供給過剰」に加え、「不動産価格の上昇」「融資審査の厳格化」などが挙がる。貸し倒れリスクが膨らむ懸念は「ある」との回答が28行あった。懸念があるとした地銀の多くは、融資物件の「空室率の上昇」や「家賃の低下」を理由に挙げた。

 地方の人口・企業の減少が追い打ちをかける地銀の幹部は、こう警戒を強める。

「ここ数年で建てまくったアパートはゆくゆく空室が増えて家賃も下がると想定はしているが、どれだけのインパクトかは想像がつかない。アパートローンの拡大は青息吐息の業績を下支えしてきたが、今後は逆に重しとなるかもしれない」

 ささやかなバブルのツケが顕在化するのは、これからだ。(朝日新聞記者・藤田知也)

AERA 2018年9月3日号