──W杯前の5月30日のガーナとの壮行試合に向けたメンバー発表記者会見で、日本サッカー協会の田嶋幸三会長は「西野監督は孤独な作業を進めていた」と言っていました。

 正直、あの時に会長が言われたほどそういう気持ちにはなっていなかったです。ただ、会長に相談するわけでもないし、コーチングスタッフとの話し合いだけで決めたわけでもなかった。確かに最終判断を下す時は客観的に見ると、「孤独」ということになるかもしれません。

──では、もっと厳しい瞬間があったと。

 状況がなかなか変えられない時や、周りと一体となってやれない瞬間があります。スタッフの助言が少なく感じ、選手も遠ざかっていく感が否めない。応援してくれているはずのファンやサポーターの力も伝わってこないと感じたり……。実際は、そうではないのだけれど、そういうふうに自分の中で感じてしまう。そうなると、不安感もあり葛藤することもあります。

(編集部・野村昌二)

AERA 2018年9月3日号より抜粋

著者プロフィールを見る
野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

野村昌二の記事一覧はこちら