目まぐるしいIT技術の進化を考えれば、ロボット導師がお経を唱えたり、お墓をスマホの中につくることに対して異を唱えるのはナンセンス。自らの葬儀をネットで生前予約したり、DNA情報を残して天国からの復活を期す(!?)ことだって、ただの夢とは言い切れない。
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「観自在菩薩……」と木魚を叩きながら、ロボットが般若心経を読経している。妙にハイトーンな、その声を聴きながら、参列者は故人への想いを胸に、あふれる涙をハンカチで拭う──そんな葬儀風景が当たり前になる日は近いかもしれない。
そう感じさせるのが、ソフトバンクの感情認識型ヒューマノイドロボット「ペッパー」を使ったロボット導師サービスだ。開発したのは、医療用チューブなどのプラスチック成形を行う、神奈川県藤沢市のニッセイエコという会社。正社員68人の、葬儀とは縁もゆかりもない中小企業がなぜロボット導師の開発に乗り出したのか? 同社IT事業部の船木修さんによると、
「ロボット導師の開発は弊社の社内システムを管理するIT事業部の発案です。弊社では在職中に亡くなられた方の物故者慰霊祭を年に2度、春と秋に執り行っています。人間型ロボットといえば、会社の受付や案内係が一般的ですが、その慰霊祭で僧侶の代わりにロボットに読経させることはできないか、と考えたのが、そもそものきっかけです。昨年春の慰霊祭で初めてお経を唱え、2017年9月からは一般の方々にも、5万円からの料金設定で幅広く利用していただこうと、サービスを開始しました」
確かに、檀家制度や菩提寺などとは無縁な人からすれば、葬儀の時だけ、よく知りもしないお坊さんにお経をあげてもらって、「本当に故人のための供養になるのか?」というのが本音かもしれない。「だったらロボットに読経してもらっても問題ないんじゃないか」と考えても不思議ではない。
「9月竣工を目指して斎場兼スタジオを建設中で、今後はペッパー導師による格安の葬儀プランをご提案する予定です。生活保護を受けられている方の福祉葬などでは、お坊さんも呼ばない直葬の火葬式がほとんどといわれています。そんな中でも、最後ぐらいはペッパー導師による読経で故人をお送りすることができれば、と思っています」(船木さん)