小島慶子(こじま・けいこ)/エッセイスト。1972年生まれ。東京大学大学院情報学環客員研究員。近著に『歳を取るのも悪くない』(養老孟司氏との共著、中公新書ラクレ)、『幸せな結婚』(新潮社)
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小島慶子(こじま・けいこ)/エッセイスト。1972年生まれ。東京大学大学院情報学環客員研究員。近著に『歳を取るのも悪くない』(養老孟司氏との共著、中公新書ラクレ)、『幸せな結婚』(新潮社)
学校での性教育は、バッシングなどの影響で現在「停滞期」だという(撮影/写真部・加藤夏子)
学校での性教育は、バッシングなどの影響で現在「停滞期」だという(撮影/写真部・加藤夏子)

 タレントでエッセイストの小島慶子さんが「AERA」で連載する「幸複のススメ!」をお届けします。多くの原稿を抱え、夫と息子たちが住むオーストラリアと、仕事のある日本とを往復する小島さん。日々の暮らしの中から生まれる思いを綴ります。

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 先日、NHK「あさイチ」の性教育特集に出演しました。我が家ではうんと幼い頃から子どもの質問に一問一答で答えていたら小学校低学年でほぼ全てのことは教え終わったという話をしたのですが、共演した専門家たちも、性教育は早くからきちんとするべきだと指摘していました。視聴者からはたくさんの意見が寄せられたようです。夏休みが近いからか、読売新聞や朝日新聞でも特集記事が掲載されました。熱いぞ、性教育!

 今は子どもたちがネットで様々な性に関する情報に触れてしまう時代。知識のない状態でアダルトサイトや性的な投稿に触れて、誤った情報を信じてしまうことも。フィルターをかけても、子どもが検索しそうな一般的なワードでアダルトサイトが表示されることもあるそうです。親が完璧に情報を遮断できるわけではありません。

 寝た子を起こすなという意見もあるけれど、子どもは寝ていないですよ。自ら関心を持たなくても、情報には触れてしまう。むしろその時に何のリテラシーもなく鵜呑みにしてしまう危険から、いかにして我が子を守るかを真剣に考えるべきです。「自然に知る」のに任せておくのは、例えて言うなら、車について何も教えずに子どもに一人歩きさせるようなもの。ただ「歩くときは危ないものに気をつけなさい」と言い聞かせても、車がどういうものか、信号の色の違いは何を意味するのか、道路のシマシマは何なのかを知らなければ、身を守ることはできないですよね。

 正しい知識は、性感染症や望まない妊娠、性犯罪被害を避けるためにも必要。加えて、性的なコミュニケーションには同意が必要なこと、性は人の尊厳そのものであり多様であることなど、人権に関わる教育も欠かせません。

 自民党の杉田水脈議員のLGBTに対する一連の差別発言も、知識がなければ「そういうものか」と思ってしまうかもしれない。あの偏見と憎悪に満ちた発言を見るにつけても、正しく知ることの大切さを痛感します。無知は暴力の源なのです。

AERA 2018年8月6日号

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小島慶子

小島慶子

小島慶子(こじま・けいこ)/エッセイスト。1972年生まれ。東京大学大学院情報学環客員研究員。近著に『幸せな結婚』(新潮社)。共著『足をどかしてくれませんか。』が発売中

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