職場のハラスメント研究所代表理事 金子雅臣さん(74、右):労働ジャーナリスト。『壊れる男たち―セクハラはなぜ繰り返されるのか』(岩波新書)など著書多数/評論家 勝部元気さん(35):ジェンダー論などを専門とする若手論客として活躍する。社会起業家。リプロエージェント代表。著書に『恋愛氷河期』(扶桑社)(写真:本人提供)
職場のハラスメント研究所代表理事 金子雅臣さん(74、右):労働ジャーナリスト。『壊れる男たち―セクハラはなぜ繰り返されるのか』(岩波新書)など著書多数/評論家 勝部元気さん(35):ジェンダー論などを専門とする若手論客として活躍する。社会起業家。リプロエージェント代表。著書に『恋愛氷河期』(扶桑社)(写真:本人提供)
セクハラが根絶されると恋愛がしにくくなる?(AERA 2018年7月30日号より)
セクハラが根絶されると恋愛がしにくくなる?(AERA 2018年7月30日号より)

 男女が恋人同士になる過程で、「告白」は多くの人が通る道……と思いきや、近年、それさえも「ハラスメント」だとする声が出てきている。セクハラ認定が怖くて職場恋愛できないという男性もいたりと、様々なハラスメントが恋愛事情に影響を与えている。専門家らはこれをどう見ているのか。

【アンケート結果】セクハラが根絶されると恋愛がしにくくなる?

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 関係性を築いていっても、「告白」を躊躇する人もいる。中学校教諭のタツロウさん(40)のケース。3カ月ほど前から、同い年の同僚女性と月1、2度、二人で飲みに行くようになった。観劇が共通の趣味で、休日に二人で舞台を見に行ったこともある。そろそろ告白を、と思っているが、踏み切れないという。

「手をつないだわけでもキスをしたわけでもない。相手にとって単なる“飲み友達”だったとしたらと考えると……」

 告白を躊躇する男性に追い打ちをかけるかのように、「告白ハラスメント(告ハラ)」なる言葉も登場した。ネットでは「愛の告白はセクハラか」が論議され、「大人の告白」は「最後の念押し」であるべきだとして、段取りなしの告白をハラスメントと断じる論調もある。

 奥手ならば「草食系」と揶揄され、告白しようと思ったらそれもハラスメント。じゃあいったいどうしろと。男性からは怨嗟の声が上がる。

 女性の側は、どう考えているのか。今回の取材で記者(30歳、男性)が直接話を聞いた女性15人ほどのなかに、「告ハラ」に賛同する人はいなかった。

「好意を寄せてくれたことを迷惑だとは思わない」
「一目惚れだって立派な恋愛」
「むしろ早く告白してよと思うほうが多い」

 しかし、インターネットなどへの書き込みを見ると、「告ハラ」に共鳴する女性は存在する。

「振るのもひと仕事。なんでそんな労力をかけなきゃいけないの?」
「そういう目で見られていたなんて、ちょっと気持ち悪い」

専門家はどう見るか。「職場のハラスメント研究所」代表理事の金子雅臣さんは、「告ハラ」には否定的だ。

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川口穣

川口穣

ノンフィクションライター、AERA記者。著書『防災アプリ特務機関NERV 最強の災害情報インフラをつくったホワイトハッカーの10年』(平凡社)で第21回新潮ドキュメント賞候補。宮城県石巻市の災害公営住宅向け無料情報紙「石巻復興きずな新聞」副編集長も務める。

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