益嶋裕(ますしま・ゆたか)/マネックス証券 マーケットアナリスト兼インベストメント・アドバイザー。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業後、2008年4月に新卒第4期生としてマネックス証券に入社。マーケティング部で日本株や中国株のマーケティングを担当後、2013年7月より現職。現在は国内外の経済リポートの執筆や各種ウェブコンテンツの作成に携わりながら、オンラインセミナーにも出演中。日本証券アナリスト協会検定会員(撮影/小山幸佑)
益嶋裕(ますしま・ゆたか)/マネックス証券 マーケットアナリスト兼インベストメント・アドバイザー。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業後、2008年4月に新卒第4期生としてマネックス証券に入社。マーケティング部で日本株や中国株のマーケティングを担当後、2013年7月より現職。現在は国内外の経済リポートの執筆や各種ウェブコンテンツの作成に携わりながら、オンラインセミナーにも出演中。日本証券アナリスト協会検定会員(撮影/小山幸佑)
「貸株」「預株」。知らない人は遅れてる!?
「貸株」「預株」。知らない人は遅れてる!?

 大手都市銀行の定期預金金利は0.02%(300万円以下・1年ものの場合)、普通預金にいたっては0.001%。今や「預金で増やす」と考える人はいないと思うが、自分の持っている「あるモノ」を預けることで、年率最高10%の金利がもらえるサービスがある。

【「貸株」「預株」の仕組みは?】

 アエラ増刊『大人の株主優待ランキング』に掲載された「貸株サービス」について紹介しよう。

*  *  *

「貸株サービス」とは、証券会社を通じて自分の株を金融のプロに貸し出すだけで金利がもらえるという、かなりラクチンな資産運用法だ。

 有名企業で値段も安定した株を長期保有しながら、「貸株サービス」で金利を着々ともらうのはどうだろう? せっかく選んだ株を眠らせておくのはもったいない。もうひとがんばりさせて、高い運用収益を目指すのだ。

 方法は簡単。手持ちの優待株を証券会社に貸すだけ。証券会社によって「貸株(かしかぶ)」「預株(よかぶ)」と名称は違うが、ネット証各社で実施しているサービスだ。

 たとえばインターネット取引大手のマネックス証券では、「貸株サービス」という名称で取り扱っている。株を預かる期間に応じて、顧客には金利が支払われる。
 
 利率は毎日変動するが、本誌調査時点で0.5%以上が945銘柄あり、そのうち5%以上が35銘柄。10%という超高利回り株も5銘柄あった。貸株サービス開始後のデータを振り返ってみたが、「これは高金利だ!」と思う銘柄が枯渇した時期はなかった。

 株を貸すだけでお金がもらえる貸株サービスでは、借り手は誰なのか、貸した株はどうなるのか、怪しくないのか? マネックス証券のマーケットアナリストで、個人投資家の運用指南役として人気の益嶋裕さんに質問してみると――。

「証券会社は個人から借りた株を集めて、機関投資家などに貸します。機関投資家は『カラ売り』といって値下がりの見込まれる株を売って利益を狙うのですが、その際に株を借りる先の一つが証券会社です。

 株を借りた機関投資家は証券会社に『借り賃』としてお金を払い、証券会社は株を貸してくれた個人に貸株金利としてお金を渡す仕組み。借り手が多くて貸し手の少ない銘柄ほど高い金利が付いています」(益嶋さん)

 高い金利は確かに魅力的だが、リスクもある。株式を貸すと名義が個人から証券会社に変わるため、配当や優待の権利を失ってしまう場合があるのだ。

 主要ネット証券の例では、権利確定の1日前に名義を個人に戻し、配当や優待を受け取れるサービスも行っている。配当受け取りは手数料が0.05%(2000円の配当なら1円)と、負担は軽めだ。優待に関しては手数料無料。

 注意したいのは、貸した株は機関投資家が売りに出す可能性が高いので、潜在的な株価下落要因になること。機関投資家が高い金利を払ってでも借りたがる株は、業績不振などのネガティブ要因を抱えている場合が多く、もらった金利以上に株価が下がってしまうリスクもある。「絶対に安全」と断言できない点ではほかの投資と同じだ。

※AERA増刊『AERA with MONEY 大人の株主優待ランキング』より