キリンウイスキー/キリンビールマスターブレンダーの田中城太。2017年に国際的アワード「アイコンズ・オブ・ウイスキー」において世界最優秀のブレンダーに輝いた。それが全社員のモチベーションも高めることにもつながっている。バックの貯蔵棚は18段で、ビル10階相当の高さ。約4万樽の原酒を収納できる貯蔵庫が4棟あり、工場はフル稼働(撮影/写真部・加藤夏子)
キリンウイスキー/キリンビールマスターブレンダーの田中城太。2017年に国際的アワード「アイコンズ・オブ・ウイスキー」において世界最優秀のブレンダーに輝いた。それが全社員のモチベーションも高めることにもつながっている。バックの貯蔵棚は18段で、ビル10階相当の高さ。約4万樽の原酒を収納できる貯蔵庫が4棟あり、工場はフル稼働(撮影/写真部・加藤夏子)
キリンディスティラリー富士御殿場蒸溜所での樽詰め。蒸留されたばかりの原酒は樽詰めされ、貯蔵庫で深く長い熟成の眠りにつく(撮影/写真部・加藤夏子)
キリンディスティラリー富士御殿場蒸溜所での樽詰め。蒸留されたばかりの原酒は樽詰めされ、貯蔵庫で深く長い熟成の眠りにつく(撮影/写真部・加藤夏子)

 低迷に苦しんでいた国産ウイスキーが、ここにきて大好況を迎えている。しかし、熟成期間が必要なウイスキーならではの品薄という問題にも直面している。売れ行きを抑えるため、容量を増やした上で新製法を導入し、値上げに踏み切った企業もある。

【写真】キリンディスティラリー富士御殿場蒸溜所での樽詰めの様子

ウイスキー需要がピークだった1983年の国産ウイスキーの課税数量(工場から出荷されて酒税が課される数量)は40万キロリットル弱だったが、角ハイボールが登場してくる07年には7万4千キロリットルにまで落ち込んでいる。その後に急増し、17年には14万キロリットル弱にまで回復している。

すぐに出荷量を増やせるものなら、まだまだ課税数量は伸びていたはずである。しかし需要が低迷した時期、どのメーカーも将来の需要拡大を予測できず、仕込み量を減らしつづけていた。そのため、需要が急拡大しても、すぐに対応できず、販売休止や終了というかたちで調整するしかなかった。メーカーとしても苦渋の選択であり、製品化までに長い時間を要するウイスキー製造ならではの難しさだ。

需要拡大が続く現在、各メーカーは増産体制を急ピッチですすめている。ニッカウヰスキーを子会社にしているアサヒビールのマーケティング第三部(洋酒)担当副部長、榊原守弥が説明した。

「17年の仕込み量は15年比で180パーセントくらいです。この原酒が製品に使えるのは数年から10年、20年後ということになります」

 そんななかで、キリンビールでもヒット商品が生まれる。サントリーやニッカウヰスキーにくらべれば、同社のウイスキー造りの歴史は浅い。それだけに、意義深いヒットといえる。

それが、「富士山麓」だ。アルコール度数40度くらいの製品が多いなかで、50度を謳った製品である。ウイスキーへの関心が高まっているからこそのヒットともいえる。

05年に発売されたが、人気に拍車がかかり、16年には小売価格が1千円前後だったものを1300~1400円くらいになる値上げに踏み切った。値上げで売れ行きを抑えたのだ。

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