「ただの値上げではなく、容量を600ミリリットルから700ミリリットルに増やし、通常なら瓶詰め前に冷却濾過しますが、それをやらないで香味成分をほとんど析出しない新製法を導入し、おいしさを進化させています。お客様には『真面目な値上げ』と評価されています」

 キリンビール・マーケティング本部洋酒・海外ビールカテゴリー戦略担当主務の宮田哲弥は、そう説明した。

「とはいえ、飲んでもらっているのは30代後半以上の年齢層です。まだまだ若い人は少ないのが現状です」

 とも、宮田は言った。さらに続ける。

「ハイボールで若い人たちも、入り口に集まってきています。さらに深いところにまで入ってくる可能性は高まっています」

 それを取り込むためキリンビールでは、富士御殿場蒸溜所で年間300人以上もの営業担当者に研修を行っている。ウイスキーの魅力を、より消費者に伝えて市場開拓につなげるためだ。

 各メーカーの増産体制が整ってくれば、さらに魅力的な製品も市場投入されてくる。さまざまなプロモーションで、ウイスキーの魅力に触れる機会も増えてくるはずだ。消費者にしてみれば、心躍る状況が、いま静かに進行している。(文中敬称略)(ジャーナリスト・前屋毅)

AERA 7月16日号より抜粋