「このロボットは女性ですが、もし男性のロボットが同じことを言ったら、人々の受け止め方は違うかもしれません(列挙された職業はどれも、男性が支配的な分野である)」

 映像の中のフェムボットは皆、美しい外観を持ち、物腰柔らかに振る舞う。

「ロボットは、男性から見ても女性から見ても好感を持たれるように作られます。ということは、ロボットは私たちの社会にある、女性とはこうあるべきという固定観念を反映しているのです。この作品を通じ、そのことにも気づいてほしかった」というノックス氏。

 フェミニズム本来のスローガン「未来は女性である」は、現在、#Me Tooムーブメントなどの影響もあり、アメリカでリバイバルしているという。今シリーズの他に、AIを使用した作品なども精力的に制作しているノックス氏は、最後にこう結んだ。

「私個人はフェミニズムの思想を支持します。しかし、未来は複雑すぎて予言することは困難です。人間が政治的に進化するスピードよりも、科学が進歩するスピードのほうが速いと感じています。今後は、サイエンスが(社会における)ゲームチェンジャーになるかもしれません」

 精巧に作られたフェムボットは、まるで感情があるように見える。じっと眺めているとコミカルでもあり怖くもある。未来に確証を持てない人間の感情を代弁しているかのようだ。(ライター・桑原和久)

AERA 6月18日号